31話:馬を選ぶ予定だったんです
「お待たせしました。暴れ馬の肝刺しです!」
とうとう、来てしまった。ステラさんが持ってきた大皿には、綺麗なお刺身がずらっと並べられている。薔薇みたいに盛られているところもある。ぱっと見はレバーの刺身みたいだ。私は食べたことないけど、一昔前は生の牛レバーを食べられていたんだよね。それの馬バージョンみたいな感じ。
「ほら、ウラナ。このタレにつけて食べてみろ。酒が進むぞ!」
タークスさんに渡されたタレは、甘口醤油みたいな、少し甘めのタレだ。この世界、お醤油あるんだな。
「小さいのから試してみたら? 苦手だったら、無理して食べなくて大丈夫よ」
「内臓の生が苦手な奴は一定数いるからな」
小さいひと切れをフォークですくって、タレをちょんっとつける。臭いは、生臭いとかはないね。新鮮な証拠だろう。心の準備をしてから口に入れる。まずはタレの甘じょっぱい味を感じて、次に肝の表面のねっとりというか、ぷりぷりした食感。噛むと、こりこりした弾力があって楽しい。味は癖がなく、うまみが強い。タレがよく合って、めちゃくちゃ美味しい。
「美味しいですね!」
「だろぉ!」
白米が欲しくなる味だ。タレのせいかもしれない。白米があるか聞いてみたが、残念ながらないようだ。異世界あるある。稲とかないのかな。
その後も、肝刺しやパスタなどの美味しいものに舌鼓を打った。どれも美味しい。
「さて、腹も膨れてきたことだし、明日の予定について話すぞ」
タークスさんが話し始めたと同時に、ヴィンセントさんが地図を広げた。アルベリア国の地図で、町や村が細かく記されている。
「ブルーリムが向かった村はここ。ポテラ村だ。小麦と芋がうまい、穏やかな村だな」
「ゴブリン被害が出たのはつい最近。被害もそんなに大きくなかったみたいよ」
「見つかった上位種はアーチャーみたいだな。エリオの毒ダーツで仕留められたから、そんなに育ってはいないらしい」
草原に囲まれた小さな村が目的地のようだ。私達がいまいるアルベリアの首都からは、けっこう距離が離れている。移動に1日かかるのも納得の距離だ。
「買い出しは今日中に終わらせてある。明日は朝一でウラナに馬を確保してもらって、予約してある馬車を受け取って村に向かうぞ」
「馬は1頭で十分よ」
「ランページ・スティードの乱入がないといいが」
頭をよぎる、馬と戦うたびにあった乱入事件。さすがに戦闘じゃないから、乱入は発生しないと思いたい。断言はできないけども。
道順の説明を受けて、今日は早めに解散することになった。明日に備えて体を休ませるのだ。私達が話し合いをしている間に交流を深めたのか、ちゅんはミケを怖がらなくなり、緑子とも仲良くなったようだった。召喚獣同士、仲良くてよい事です。
朝一で馬と契約するために外に出る。体躯もそこそこ大きい馬と契約しようと近づいたら、ランページ・スティードが割り込んできてうっかり契約してしまったよね。なんでこうなった。タークスさんは爆笑してた。黒い体毛の個体だったので、名前はクロにしたよ。ヴィンセントさんが何か言いたそうにこっち見てたけど気にしない。ネーミングセンスはないんです。クロのステータスはこんな感じだった。
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名前:クロ
性別:♂
種族:暴れ馬
スキル:アドレナリン、頭割り
LV.18
STR:20
DEX:14
VIT:24
INT:12
MND:20
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『アドレナリン』スキルのおかげで暴れ回っても平気だったんだね。契約した後も涎ダラダラで落ち着きが無かったので、『アドレナリン』スキルを使わないように頼んでみた。しばらくすると、落ち着いて鞍や手綱をつけることができた。草原を走り回ってるの、アドレナリンのせいだったんだね。タークスさん達も知らなかったみたいだ。契約してみると意外なことが分かったりして面白いね。
ところで、『頭割り』のスキルの詳細が怖いんですけど。頭に攻撃が当たったら、自動で発動する即死系のスキルみたい。怖いんですけど。ランページ・スティードの標準装備だったら怖いわ。タークスさんにそれとなく確認したら、頭を蹴られたことはあるが、割れたりはしなかったらしい。これは、『頭割り』のスキルが珍しいのか、タークスさんが頑丈すぎるのか、判断つきませんね。
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