29話:ちょうどよく降ってきた
「よし、馬を仲間にしよう」
タークスさん達にスキルのことを相談したら、馬の召喚獣が欲しいという強い要望が出た。遠征となると、長距離の移動になる。その足になるし、馬車を使う時に馬代がかからないというメリットもある。デメリットは宿屋で馬小屋を借りなければならないが、人の宿泊費よりは安いそうだ。テイマーでも移動に使う従魔をテイムすることは多いらしい。
「鳥系の魔物も仲間にしたら、連絡がスムーズになるんじゃないか」
「緑子が襲われないかしら」
「そこはウラナがしつけるだろ」
しつけ方がわかりません。だけど、鳥が仲間になれば連絡は勿論、偵察や攪乱にも使えるかもしれない。鳥の話題が出てから緑子が「!?」みたいなリアクションしてるけど、食べられたりしないように私が頑張るから許してほしい。ほら、ミケちゃんは緑子の味方だしさ。ね。
ミケも見方によっては緑子にとって捕食者では? 猫って虫も食べるよね。そこら辺はいいのかな。……仲良くしてるから良いか。
「馬はすぐそこに群れがあるけど、鳥系の魔物って何かいたか?」
「そこら辺を飛んでる小鳥くらいじゃないかしら」
「あれも一応はまどい鳥って名前があるぞ。危険を察知すると幻覚を見せてくるが、人のいる場所に住んでるヤツ等は危険性がそんなに高くない」
そこら辺を飛んでる小鳥が幻覚見せることができるって怖くない? ヴィンセントさんいわく、森の中にいる個体は警戒心が強く、姿を見せずに幻覚で襲ってくるから危険度は高めなんだそうだ。人の近くにいる個体と、森の個体では危険度が1段階違うみたい。そういう魔物はけっこういるようだ。ミケのような猫も外だと厄介な魔物になっている場合があるらしい。へぇ。
「外に出たら緑子のことは気にかけてやれよ。ミラースパロウの主食だ」
「……!?」
「こうやって怖がる様子を見ると、緑子って言葉を理解してるんだなぁ」
重たそうな頭を持ち上げて威嚇するようにゆらゆらしてる。怖かったんだね。ミケも私も気にかけとくから、そんなに怯えなくていいんだよ。
「シャアッ!」
「おっ、と」
「ぴぎゅい!?」
ミケが空に向かって唸ると同時に、緑子に向かってなにかが降ってきた。刃物ではなさそうだったので、片手で握ると生暖かい。潰されたような悲鳴も聞こえてきた。
「話をすれば、実物がきたな」
「緑子を狙って襲ってきたってところだな」
「ぴぎゅいー!!」
「元気に暴れてるわね」
降ってきたのはミラースパロウだった。人の残飯を食べて丸々と太っている。くちばしや爪を使って私の手から逃げようと暴れている。
「おぉおぁああ」
「ぴぎゅっ……!?」
「あ、大人しくなった」
そろそろ私の手に傷がつくなってところでミケがミラースパロウに近づいた。脅すように低い声で鳴いている。効果は抜群で、ミラースパロウは小さく声を上げて固まった。握ってる掌に小さい心臓がせわしなく動いている振動が伝わってくる。
「ちょうど良いから契約しちゃったら?」
「そうします。うーん、名前はどうしようかな」
見た目は丸々太った雀なんだよね。ちょっとキラキラしてる羽もあるけど、ぱっと見はぷくぷくの雀。
「君の名前はちゅんにするよ」
「ちゅん……」
「なんですか」
「いや、なんでも」
ヴィンセントさん、何か言いたいなら遠慮せずに言っていいんですよ。雀ってちゅんちゅん鳴くイメージあるんだもん。そこからとってちゅん。いいでしょう。さて、お楽しみのステータスチェックだ。
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名前:ちゅん
性別:♀
種族:まどい鳥
スキル:飛行、幻覚、実体化
LV.10
STR:3
DEX:22
VIT:4
INT:14
MND:7
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DEXが高めだね。幻を使うとあって、INTも高めだ。それはそうと、スキルについてツッコミどころが見えるんですけど。『実体化』ってなに? 詳細を見てみると、「無機物の幻を短時間だけ実体化させる」って書かれてる。これはもしや。
「幻の実体化ぁ!? そんなスキル、聞いたことないぞ」
「間違いなくユニークね」
「ユニークだな。お前、契約する魔物が全部ユニークじゃないか。どうなっているんだ」
私が知りたいです。心当たりとしては、『豪運』さんですけどね。これが良い事なのかは判断しかねます。だからみんなしてそんな不可思議なものを見る目で私を見ないでください。
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