24話:初契約は青虫
「いったい何が起きたんです?」
「なんだ、気づいてなかったのか」
ヴィンセントさんが言うには、ランページ・スティードを倒したのは私らしい。暴れるヤツにしがみついていた時に、短剣が首にぶっすりと刺さっていたらしいのだ。打ち上げられたときにも、短剣を離さなかったおかげで、動脈がばっさりと切れた。私が打ち上がってる間に血しぶきもばらまかれ、ランページ・スティードは事切れたということだ。
私はそんなことになってるとは全然気づいてなかった。なんか右手が熱いって思ってたけど、血を被ってたからなんだね。短剣を握っていた腕は真っ赤になっていた。うへぇ。
「偶然とはいえ、ランページ・スティードを倒せるなんてな」
「ラッキーなのかな。いや、乱入されたことを考えるとアンラッキー?」
ちょっと判断がつきませんね。
「うるるる”っ」
「さっきから何してんのさ」
「このグリーンワーム、ずーっといるのよねぇ」
ミケがまたグリーンワーム相手にシャドーボクシングしてた。こう、攻撃しようとやってるんじゃないんだよ。肉球だけでソフトタッチしてるの。傷つけたり、狩ろうという意思はないようだ。グリーンワームも何考えてるのかわかんない顔でじっとしている。猫と違って表情ないもんな。
「にゃーん」
「なに?」
「うるるる”っ!」
「どうしたのよ」
ミケが服をよじ登って肩に乗ってきた。そのまま、甘えた声を出して私にすりすりしている。何をどうしたいのよ。あと、喉を踏むの止めてね。苦しい。
うろちょろされるので、ミケをだっこした。そうしたら、今度はグリーンワームが私の体を登ってくる。私の体は山ではない。
「仲間になりたいんじゃないかしら」
「グリーンワームがそんなこと考えるか?」
「ミケちゃんは気に入ってるみたいよ」
キャシー姉さんの言葉は一理ある。なぜって、グリーンワームが二の腕に張り付いて落ち着いてしまったのだ。ミケは肩に乗っている。肩からグリーンワームに向かって前足を伸ばしているが、明らかにグリーンワームの頭を撫でているのだ。いつの間にそんなに仲良くなったんだよ。会ったの、ついさっきだろ。
「仲間にしたいの?」
「うにゃあん」
可愛い声で鳴きよる。
「キミも、仲間になりたいの?」
「……」
「うわ、びっくりした」
なんとなく問いかけてみたら、糸を吐いてしがみついてきた。私とミケと自分を糸でひとまとめにしている。これは、肯定と受け取っていいんだろうか。
「初討伐の次は初契約、やっちゃいましょう」
「グリーンワームなら飯代もそんなにかからないしな」
「ウラナが虫嫌いじゃなければいいんじゃないか」
虫は苦手だけど、グリーンワームはファンタジー感があるので耐えられますね。試しに契約してみるか。それにしても、契約ってどうやるんだろ。
ミケは女神がくれた召喚獣だ。契約っていうものをした覚えがない。私がミケにしたことと言えば、名前を付けたくらいだ。
「……緑子」
「にゃ?」
「お前の名前は緑子にするよ」
試しに名前を付けてみる。今回も直感だ。緑色の子だから緑子。若干女の子っぽいが、雄でもギリ大丈夫でしょう。緑子の様子を見ると、頭を上下にゆらしている。これは、喜んでるのか?
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名前:緑子
性別:♀
種族:青虫
スキル:糸、毒液
LV.8
STR:6
DEX:3
VIT:6
INT:10
MND:15
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ステータスを見られるようになった。へぇ、INTとMNDがちょっと高めなんだ。毒液というスキルもあった。毒使えるんですか?
「契約できたか?」
「できました。グリーンワームってけっこう危ないんですね」
「グリーンワームは雑魚の代表格よ」
毒液スキルのことを伝えたら、3人とも驚いていた。グリーンワームが毒液を使う所を見たことがないし、聞いたこともないようだ。基本的に、糸を吐いて、そこら辺を這ってるだけの魔物らしい。
「特殊個体なのかもな」
「はぇー」
稀に、レアなスキルを持って生まれてくる個体がいるようで、そのことをユニークと言うようだ。ファンタジー。それにしても、たまたま遭遇して、ミケの玩具にされてたヤツで、初契約した魔物がユニークだなんて、どんな確率だよ。めっちゃレアな体験をした気がする。
ちらっと『豪運』のスキルが頭をよぎったが、目をそらしておいた。気にしたら自己主張が激しくなる気がしたからね。そっとしておいた方がいいのよ。私の種族と同じ感じ。
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