21話:予行練習
さて、防壁周辺です。来たばかりの時は防壁にばっかり目が行ってたけど、草原を見回してみると、馬がちらほら見える。
足元にでっかい青虫みたいなのもいて、びっくりした。名前はそのまま、青虫だそうです。日本にいた青虫の何十倍ってサイズ。人によっては発狂レベルじゃないかな。
「群れで動いてんのが馬で、1頭だけ走ってるのがランページ・スティードだ」
「なるほど」
「突進してきたところを、大盾で受け止めて首の骨を折るのがタークスの戦い方よ」
それは、自滅するほどの勢いで突っ込む馬にビックリすればいいんですか。それとも、大盾で受け止めて骨を折らせるタークスさんにビックリすればいいんですか。どっちだ。どっちにしても怖いですけどね。
「突っ込んで来られてもウラナのDEXなら避けられるぞ」
「レベル差が6くらいあるのに?」
「お前のDEXはレベル10ではない」
極振りなだけである。
ミケちゃんは私たちの話に興味なんてないので、そこらへんを這っているグリーンワームにシャドーボクシングしてる。猫ちゃんでよくあるソフトタッチ連打。なにしてんですかねぇ。
「実戦の前に、短剣の使い方を教えるぞ」
「よろしくお願いします」
「握り方はわかるか?」
「こう?」
サスペンスでよくある、立てこもり犯とかが片手でナイフを握って相手に振りかざすようにする。他に握り方わかんない。あとは、相手のお腹に包丁をぶっ刺す感じの、両手つかみくらいしかわからない。表現がどちらもサスペンスだって? 親が好きなんだよ。サスペンス劇場。
「持ち方だが、初心者はしっかり握って持て」
「しっかり握って持つ」
「武器がすっぽ抜けて、丸腰になるヤツが多い。また、攻撃の最中に取り落として、大怪我をするやつもいる。それを防ぐためだ」
「なるほど」
ヴィンセントさんが持ち方を見せてくれた。逆手持ちってやつ。たしかに、これなら親指と人差し指にぐっと力を入れて持てるね。でも、振れなくない?
「ウラナがやることはただひとつだ」
「はい」
「避けて、相手の体に刃を当てる。それだけだ」
「避けて、相手の体に刃を当てる」
ヴィンセントさんが横にずれて、元いた場所あたりに短剣を振っている。真似して動いてみるも、ちょっとよくわからない。これは、どういう想定で動いてるんです?
「お前の強みはDEXの異様な高さしかない」
「おっしゃる通り」
「見切りで完全に回避して、相手が突っこんできた力を利用して傷をつけるんだ」
タークスさんがいつの間にか馬の仮面をつけて、大盾をかまえてヴィンセントさんに向かって行った。ヴィンセントさんはそれを余裕をもってかわし、胴に見立てた大盾に短剣を当てて跡を付けた。こんな感じで動けばよいらしい。
同じように私に向かって馬面つけたタークスさんが向かってくる。とても遅い。見切りを使わずともサイドステップでかわすことができた。かわした後に大盾にそって短剣をすべらせる。同じように跡をつけられた。ヴィンセントさんを見る。頷いているので、これで良いらしい。
「すげー余裕でかわされる」
「極振りならヴィーくらいDEXありそうだものね」
ヴィンセントさんの動き的に、まだDEX値が負けてそうなんだよね。いずれは追い越したいです。
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