20話:腹ごしらえ
朝です。おはようございます。ミケちゃんにベッドの大半を奪われた飼い主です。猫の下僕あるあるを披露したところで、本日も頑張ってまいりましょう。
「ふぁあお~」
「でっかいあくびですね」
「にゃっふ」
ベッドのど真ん中でニャンモナイトしてるやつは違うぜ。体がばっきばきである。
支度ができたら、タークスさんとヴィンセントさんと合流してご飯屋さんへ。お米はなかった。固い黒パンと、柔らかくするためのスープ、大鍋でまとめて煮込まれた何かのお肉の煮物。色はトマトベースっぽいけど、味がなんかスパイス感が強め。トマトの酸味がない。というか、この世界にトマトってあるのだろうか。
「トマト煮って苦手なのよね」
「キャシーの服にはねるもんな」
「布で前掛けしろ」
「いやぁよ。子供っぽい」
トマト煮で合ってた。スパイスを強めに利かせてるから、トマトの風味が消えてるのかな。わからん。味は美味しい。カレーに近いものがあるけど、カレーほど辛くはない。
「にゃ~」
「ミケのは魚の白焼きだよ」
「うぁ~」
焼き魚をこっちに押してくる。なに、食べたくないってこと? 訴えてる内容がわからずに首をかしげてると、焼き魚をペロッて舐めた後に毛づくろいを始めた。うん、意味わからん。
「う”ぁんっ」
「……あ、もしかして熱いの?」
「んにゃあ」
熱くて食べられないって訴えてたらしい。けっこう冷ましたつもりだったんだけどな。外は冷めてるように見えて、中は冷めてなかったようだ。仕方ないので、ほぐしてさらに冷ます。指で押してもぬるいなってくらいに冷ましてからようやく食べ始めた。こういう手間がないキャットフードって偉大だよね。
「ウラナも前掛けいるか?」
「服が黒いからこぼしたところでバレません」
「それは凛々しい顔でいうことか?」
「次の防具は黒にしようかしら」
キャシー姉さんは前掛けをして食べてた。スープにとろみがあったけど、小さいとびはねって防ぎづらいよね。ラーメンのスープとか、そばの汁とか、白い服着てる時に食べたくないもん。
「黒い服のヒーラーは魔導士と間違えられないか?」
「いいじゃないの。ヒーラーが黒い服を着たって」
「タークスがうっかり見失うに1票」
「否定できねー」
否定できないんだ。ファンタジーなら、清潔にする魔法とかあるんじゃないの? 異世界って何ができて、何ができないのかいまいちわかりづらいなぁ。漫画や小説、アニメで見た! っていうのもあれば、なにそれ知らん、こわってなることもある。現実って小説よりも奇なりっていうけど、本当なんだなぁ。
……勇者召喚に巻き込まれて死んでる時点でいまさらか。
「そういや、ウラナ。防壁の周辺で戦う魔物なんだけどよ」
「はい」
「馬だ」
「……うま?」
馬って、あの馬? それは魔物って言えるんでしょうか。
「馬自体は魔物じゃないんだけどな。たまーに変異して暴れ馬っていう魔物になってんだ」
「そのランページ・スティードと戦うんですか?」
「いや、ランページ・スティードはレベルが16くらいあるからな。そこら辺を走ってる馬で肩慣らしだ」
最初の相手は馬かぁ。馬ってでかいけど、私は戦えるのかな。紙装甲ですよ。ミケも防御力は低いしね。うまくやれるのだろうか。
「心配すんな。戦う前に、ヴィーが短剣の使い方を教えるからよ」
「いざという時はここに肉壁もいるしな」
「肉壁いうな!」
バックラーって仲良いよなぁ。私もバックラーの仲間ですが、新参者としてしみじみ感じる。仲が悪いより、いい方が良いよね。いずれは私もこういう軽口を言い合える仲になりたいな。
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