第21話:逃亡者たちの朝食
私たちは、島で調達した古い船(幽霊船を改造したもの)で海を渡っていた。
目指すは、世界の中心にある「管理者の塔」。
そこへ行けば、全ての決着がつく。
決戦の朝。
私は早起きをして、甲板で朝食を作った。
メニューは、アルト師匠の大好物、フレンチトースト。
卵と牛乳に一晩浸したパンを、バターでじっくりと焼く。
甘い香りが潮風に乗って広がる。
「んん……いい匂い……」
船室から、寝ぼけ眼のアルト師匠が出てきた。
髪はボサボサ、シャツのボタンは掛け違えている。
そんな無防備な姿を見られるのも、これが最後かもしれない。
「おはようございます、アルト師匠。朝ごはんですよ」
「おはよう、ココロン。……うまそう!」
彼は席に着き、フォークを構える。
一口食べると、彼の顔がとろけた。
「うめぇぇぇ! 世界一だ!」
「ふふ。大げさですよ」
私たちは並んで海を眺めながら、食事をした。
波の音。カモメの声。コーヒーの湯気。
なんてことのない、ありふれた朝。
けれど、それが何よりも愛おしかった。
「……なあ、ココロン」
アルト師匠がコーヒーを飲みながら言った。
「この戦いが終わったらさ。……毎日、これ作ってくれない?」
それは、遠回しなプロポーズだった。
私は胸が詰まった。
終わったら。もし、生きて帰れたら。
「……はい。毎日でも、飽きるまで作りますよ」
「飽きないよ。絶対に」
彼は真剣な目で言った。
私たちは指切りをした。
生きて帰る約束。未来への約束。
水平線から太陽が昇る。
その光は、私たちの行く手を照らす道標のようだった。
さあ、行こう。
最後の戦いが始まる。




