第20話:暴かれた罪と、世界の管理者
指名手配された私たちは、追っ手を逃れて南の島へ来ていた。
青い海、白い砂浜。
ここは管理者の目が届きにくい、数少ない楽園だ。
「うっひょー! 海だー!」
アルト師匠が服を脱ぎ捨て、海へ飛び込む。
私も久しぶりにローブを脱ぎ、水着になった。
……少し恥ずかしいけれど。
「コ、ココロン……その格好……」
海から上がったアルト師匠が、私を見て固まる。
そして、ツーっと鼻血を垂らした。
「あらあら。のぼせましたか?」
「ち、違う! 刺激が強すぎた……! ありがとうございます!」
彼は何に対して感謝しているのか、拝むように手を合わせた。
私たちは砂浜で寝転び、トロピカルジュースを飲んだ。
マロンもヤシの木の上で昼寝をしている。
平和だ。ここが牢獄世界だなんて信じられないくらい。
「ねえ、ココロン。このままここで暮らさない?」
アルト師匠がポツリと言った。
「世界なんて救わなくていい。逃げ続けて、二人で隠れて暮らすのも、悪くないかもよ」
それは、甘い誘惑だった。
戦わなくていい。傷つかなくていい。
ただ愛し合って生きていく。
それは、私がずっと望んでいた「普通の幸せ」かもしれない。
けれど。
私は空を見上げた。
遠くの空には、まだ黒い雲がかかっている。
私たちが逃げている間にも、誰かが泣いている。
「……ダメですよ、師匠。私たちは『詩篇姫と吟遊詩人』ですから」
「……だよな」
彼は苦笑して、起き上がった。
「わかってる。俺も、君が悲しい顔をする世界は嫌だ。……行こう、ココロン。最後まで」
彼は私の手を握った。
その手は砂で汚れていたけれど、とても温かかった。
その時、空から一枚の紙がひらひらと落ちてきた。
私たちの指名手配書だ。
そこには『賞金首:愛の逃亡者たち』と書かれていた。
「愛の逃亡者だって。……悪くない響きだな」
「ふふ。そうですね」
私たちは笑い合い、再び旅立つ準備を始めた。
バカンスは終わりだ。ここからは、最終決戦への道が続いている。




