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「子供だから」と振った少年が、世界を敵に回しても私を守ると言い出した ~詩篇姫と反逆の吟遊詩人~  作者: 蒼山りと


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第18話:悪夢の森と、眠り姫

その夜、私は悪夢に捕らわれた。

 迷いの森で野営をしていた時、毒のある花粉を吸い込んでしまったのだ。


 夢の中で、私は泣いていた。

 手には血塗られた剣。

 足元には、愛する人が倒れている。

 幽霊王。

 彼の胸を貫いたのは、私だ。


『……愛しているよ、ココロン』


 彼は最期にそう言って、微笑んで死んだ。

 どうして? どうして笑うの?

 私を恨んでよ。呪ってよ。

 罪悪感が黒い泥となって、私を飲み込んでいく。

 息ができない。誰か、助けて――。


「ココロン!」


 声が聞こえた。

 空が割れ、光と共にアルト師匠が降ってきた。

 彼は夢の世界に侵入してきたのだ。


「アルト……? 来ちゃダメ! ここは私の罪の世界!」


 私は叫んだ。

 見られたくない。私が人殺しだなんて。

 彼に知られたら、きっと軽蔑される。


 しかし、アルト師匠は倒れている幽霊王を見て、息を呑んだ。

 そして、私を見た。


「……これが、君の苦しみか」


 彼は静かに歩み寄り、血塗られた剣を私の手から取り上げた。

 そして、それを遠くへ放り投げた。


「違う! 私は彼を殺したの! 私は汚れているの!」


「汚れてない!」


 彼は私の肩を掴んだ。


「君は世界を守ったんだろ? 彼を、狂気から救ったんだろ? それは罪じゃない。……愛だ」


 彼の言葉が、凍りついた心を溶かしていく。

 彼は知っていたのだ。幽霊王の魂を持つ彼だからこそ、殺された瞬間の「救済」の感覚を、魂の奥底で覚えていたのかもしれない。


「泣くなよ。あいつ(幽霊王)も、君が泣くことなんて望んでない」


 アルト師匠は私を抱きしめた。


「俺が許す。世界が許さなくても、俺と、あいつだけは、絶対に君を許してる」


 夢が崩壊していく。

 黒い泥が光に変わり、私たちは現実へと帰還した。


 目が覚めると、私はアルト師匠の腕の中にいた。

 彼は汗だくで、息を切らしていた。


「……おはよう、お姫様」


「……おはようございます、王子様」


 私は彼の胸に顔を埋め、久しぶりに安らかな眠りについた。

 真実は人を傷つける。私の10歳の時の言葉が彼を傷つけたように。幽霊王への嘘が彼を悲しませたように。

 けれど、愛は真実さえも包み込む。

 そのことを知った夜だった。

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