第17話:シンデレラの靴はガラスじゃない
王都で開かれる大舞踏会。
そこに「巨大な反省文」が発生するという情報を得て、私たちは潜入することになった。
ヴァイオレット様も監視に来ている。失敗は許されない。
私は魔法でドレスアップした。
純白のドレスに、ガラスの靴。
まるでシンデレラだ。でも、この靴は痛い。
一歩歩くたびに、足が締め付けられる。
これは「見栄」と「虚飾」の呪いがかかった靴なのだ。
「……大丈夫か、ココロン? 顔色が悪いぞ」
タキシード姿のアルト師匠が心配そうに声をかける。
彼は普段の旅装束とは違い、髪を整え、凛々しい青年貴族に見えた。
……悔しいけれど、かっこいい。
「平気です。これくらい、我慢できます」
私は強がった。
会場にはヴァイオレット様がいる。弱みを見せるわけにはいかない。
ダンスが始まる。
私はアルト師匠と踊った。
しかし、足の激痛でステップが乱れる。
ガラスの靴が、私の足を食い破ろうとしている。
『もっと美しく』『もっと完璧に』
靴から響く呪いの声。それは、私が自分自身にかけていた呪いと同じだった。
「痛い……!」
ついに私はバランスを崩し、倒れそうになった。
その時。
ガシャン!
アルト師匠が、私のガラスの靴を蹴り飛ばした。
靴は壁に当たって粉々に砕け散った。
「なっ……何を!」
会場が騒然とする。
ヴァイオレット様が扇子で口元を隠し、冷ややかな目で見ている。
アルト師匠は、裸足になった私の前に膝をついた。
そして、懐から取り出したのは……使い古したスニーカーだった。
旅の間、私がずっと履いていた、泥だらけの靴。
「こっちの方が、ずっと似合うよ」
彼は私の足にスニーカーを履かせ、靴紐を結んだ。
「ガラスの靴なんていらない。君は、そのままで一番綺麗だ」
彼の言葉に、会場の空気が変わった。
「見栄」の呪いが解け、人々がざわめき始める。
『そうだ、痛い靴なんて嫌だ』『私も楽な靴がいい』
貴婦人たちが次々とヒールを脱ぎ捨て始めたのだ。
ヴァイオレット様が舌打ちをして退場していく。
私はスニーカーで大地を踏みしめ、アルト師匠の手を取った。
「……踊りましょう、師匠」
「おう!」
私たちは踊った。
優雅なワルツではない。泥臭く、自由なステップで。
それは、どんなガラスの靴よりも輝いていた。




