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「子供だから」と振った少年が、世界を敵に回しても私を守ると言い出した ~詩篇姫と反逆の吟遊詩人~  作者: 蒼山りと


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第16話:10歳のプロポーズAGAIN

 旅の途中、私たちは再び「ひだまり孤児院」を訪れた。

 第14話での騒動の後、シスターから「お礼のパーティーをするから来て」と招待されたのだ。


 中庭には、シロツメクサが咲き乱れていた。

 8年前、私がアルト師匠を振った場所。


「……懐かしいな」


 アルト師匠が呟く。

 18歳の彼は、もう私より背が高いのだ。

 あの頃の、泥だらけの少年はもういない。


「ココロン。ちょっと来て」


 彼は私を中庭の隅へ連れ出した。

 そして、足元のシロツメクサを摘み、器用に花冠を作り始めた。


「8年前、俺は君に花束を渡した。でも、君は受け取ってくれなかった」


「……ええ。あなたはまだ子供でしたから」


「今は?」


 彼は立ち上がり、私の頭に花冠を乗せた。

 そして、私の目を真っ直ぐに見つめる。


「俺はもう、子供じゃない。君を守れる男になったつもりだ」


 彼は片膝をつき、私の手を取った。

 まるで騎士のように。


「ココロン。俺と、結婚を前提に付き合ってください」


 心臓が止まるかと思った。

 これは、8年前の再現ではない。

 今の彼からの、本気の告白だ。


 嬉しい。泣き出したいほど嬉しい。

 けれど、私にはまだ「幽霊王殺し」の罪がある。

 彼を巻き込んでいいのだろうか?


 迷う私に、彼はニカッと笑った。


「返事は今すぐじゃなくていい。俺が世界一の男になって、君の悩みを全部吹き飛ばしてからでいい」

「だから、それまで……俺のそばにいてくれよ、師匠」


 師匠。

 その呼び方に、私は吹き出した。

 彼はまだ、私を師匠と呼んでくれる。対等なパートナーとして。


「……はい。弟子一号。精進なさい」


 私が答えると、彼は「よっしゃー!」とガッツポーズをして、私を抱き上げた。

 そこにはもう、10歳の少年の幼さはない。

 頼もしい、一人の青年の腕だった。

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