悪夢
「希望の~」沢山の方々にお読み頂き誠に
ありがとうございます。
自分でも、ちょっと間を置くと思いきやの
新作です。
とはいえ前作がヘヴィーだったので、
さすがに疲れまして。。。
息抜きじゃないですが、
小さな物語をUPしていきたいと思います。
今回はエグイ描写は無しの(笑)
ちょっとした、でも優しいストーリーです。
よろしくお願いいたします。
「もうすぐ・・・・もうすぐ着くからね」
中古の青いミニバンは唸りをあげ国道を走った。
フロントガラスの遠く向こう、
多くのビルの隙間から病院の一角が見える。
藤井琴葉はハンドルをギュッと力強く握り込んだ。
「お母様のご容態がよくありません。
至急お越し頂けますか?」
30分前、看護師さんが電話してきた。
琴葉はアクセルをベタ踏みし、ここまで来た。
あと少しだ。待っててね・・・・!!?。
目の前を走るセダンが急停車した。
唐突にブレーキペダルを踏む。
ミニバンはタイヤを軋ませて急停車した。
「嘘でしょ・・・・」
琴葉の目の前、渋滞が出来ていた。
ミニバンの数台向こうに、対向車線まで
飛び出して横倒れになった中破の単車が見える。
その周囲に人垣が出来ていく。
「ちょっと、ふざけないでよ!
なんでこんな道で渋滞起こしてんのよ!!」
琴葉はクラクションを乱暴に叩いた。
が、状況は変わる筈はなかった。
「くっ」
琴葉は運転席を飛び出し、駆け出した。
脇目も降らずに走った。ただ前方だけを見据え。
やがて事故現場の真横を駆け抜ける。
今は構ってる場合じゃない。そう思いながら。
汗だくで、息を切らしながら走った。
やがて数百メートル先に病院入口が見えた。
必死な形相でロビーを駆けた。
「走らないでください!」
すれ違った看護師の注意も聞かずに。
ICUに飛び込んだ。
「お母さん!」
医師や看護師が見守るベッドの上に
息を引き取った母の和代の姿があった。
琴葉の頭は真っ白になった。
ベッドの上、激しく上体を起こした。
顔とスウェットの下の肌に脂汗を浮かべたまま。
琴葉は顔の汗を拭うと部屋の隅にある
サイドボードの上に目をやった。
笑顔を浮かべてる自分と母の写真に。
「・・・・」
お母さん、ゴメンね。会いに行けなくて。
琴葉は膝を抱え、ギュッと目を閉じた。