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  作者: あ
燈和=フラデリカ編
24/34

No.4(フィアンス)

<世界観設定>

カーマ:その個人に宿る特殊能力であり、ある条件を満たした者にのみ発現する。原則最上位の優先度を誇り、防御や対応、相殺するには同じく(カーマ)の力を行使しなければならない。


源術アルマ:人体を構成する基本的要素である『源素』を応用し、攻撃や防御をするために作られた術の総称。分かりやすく言えば魔法であるが、力の源は魔力ではなく身体を構成するエネルギーそのものであるため『一時的に命を削る技』とも言える。なおこの世界に魔法や魔力といった言葉や概念は存在しない。


源素げんそ:この世界の人間は『木(風)』『火』『土』『金(鉄鋼)』『水』の計5つの要素によって成り立っており、これをまとめて『源素』と呼ぶ。いずれか1つの要素でも完全に失ってしまうと人体を保てなくなってしまい、人間としての機能を失う。故にアルマの過度な使用は厳禁である。


我成ガイナ:5つある源素「木(風)」「火」「土」「金(鉄鋼)」「水」の内、『金(鉄鋼)』の要素を使用して形成される武器のこと。出現させる人によって姿形が異なり、武器種も様々。誰でも簡単に呼び出せるものではなく、ある程度の鍛錬や条件を要す。

「アん?なんだあれ」 


 『あれ』が指しているのは間違いなく、爆発跡から出現した青く輝くドームのことだろう。

 その疑問に答えるかのようにドームはパリパリと音をたてて割れてゆき、それが氷で形成されていたモノだと教えてくれる。


 中からは、無傷の一行が姿を見せるのであった。


「あァ!?アレを防いだってのか?・・・どんだけ硬ェんだよクソがッ‼︎」


「『縁を以て友を成す』がモットーなんでね。・・・俺の前で仲間は死なせないさ」


 氷戈はそんな事を口にした。

 これは学校に通っていた頃、つまりは現実世界においての氷戈のモットーであり意味は『自然な縁から出来た友達はより大切に』というものだ。

 この世界に来てからは不思議と感じさせないが、元より氷戈はちょっとしたコミュ障であり、友達と言える友達は幼馴染の彼らしか居なかったのは事実だ。

 このことも燈和への執着に繋がっていると言えよう。

 そしてこの世界に来て大事な幼馴染を全員失っている辺り、モットーである『友は大切に』というのは現実世界に限った話では無いだろう。


「ア?何訳分かんねェ事言ってやがる」


「そっちこそ、不意打ち初見殺しだなんてマナーがなって無いんじゃないの?・・・てか誰さ?」


 氷戈は毅然と問う。

 赤と黒が入り混じった短髪を熱風に靡かせ、その男は答える。


「ケケっ!まァ少しは釣り合いそうだから教えといてやるか。・・・オレ様はラヴァルド・ケラー。No.4(フィアンス)の名を冠する者だ」


「フィアンス...え、4番手ってこと?」


 氷戈は作戦会議時に開催されたフラミュー=デリッツ式強さ順名称講座の内容を思い出しながら、仲間に恐る恐る聞いた。


「そうですね。・・・10人しか選ばれないフラミュー=デリッツ最強の騎士団『十位之焔(ツェルマン=デリッツ)』の内、上位4位を四天シュピツェルといって中でも秀でた実力を持つとされてます。よりにもよってそんな奴と出くわすなんて相変わらずツイてない...」


 アゾットが頭を抱えながらも、氷戈に答えてくれた。


 -え、それって不味くない?-


 氷戈は目の前にいる相手が四天シュピツェルの内の1人である事が確定した瞬間、会議でのリグレッドの言葉を思い出した。


 ______________________________


「・・・んな訳で、結果的に敵さんは量より質で攻めてくると踏んどる。せやからウチも少数精鋭で挑む。向こうが仮に数で勝負を仕掛けてきてもええように、ラビさんは欠かせんな」


「・・・まぁそれに関しても筋は通っているね。行ってやろうじゃないか」


「おおきに。・・・ほんで残りの面子は全員、作戦終了までウィスタリアで待機や。ラヴァスティからの奇襲に備えてな」


「おお!それならば余が国を離れても安全であるな!」


「ま、まあそゆことにしといたるわ。・・・本題は確定しているフラデリカ以外の誰が参戦してくるか、や。先に言うとくがフラデリカの属する最高位騎士団『十位之焔(ツェルマン=デリッツ)』にはバケモンしかおらんで」


「余も聞いた事がある。特に上から4番目まではその一人ひとりが一騎当千の実力を持ち、4人集まれば一国をも落とせると言われておるな」


「せやなぁ、流石は実力至上主義国家といったところや。・・・ほんで今回はその4人、向こうの言い方をするなら四天シュピツェルの連中が全員出てくる事だって有り得る訳や。・・・文字通り、国一つを落としに来とる訳やからな」


「・・・・」


「ナッハハ、自分らそないに深刻な顔せんとってやぁ!あくまで最悪のケースやで?長い歴史の中でも四天シュピツェル全員出撃ッ!なんてのは片手で数える程度にしかあらへんのやから」

 ______________________________


 -いや、不味いじゃん-


 思い出せば思い出すほど、それしか考えられない。が、同時に希望も見える。


 -でもこっちにはギルバートもアゾットさんもいる。流石に3対1ならどうにでもなるんじゃないか?-


 このような考えを巡らせる氷戈に変わってギルバートが問う。


「余に無礼を働いた罪人よ、フラデリカは何処に居る?」


「あン?フラデリカだァ?・・・ん?ってことはもしかして、フラデリカの野郎が探してるっていう青髪のガキってテメェのことか!?」


 ラヴァルドは氷戈を指差し、言う。


「やっぱり俺を狙って来てるんだな、ここに。・・・良かっ...!?」


 ガキィィン!!


 目の前には、先ほどまで無かったギルバートの背中があった。

 一瞬何が起きたか分からなかったが、どうやらラヴァルドが自分目掛けて突っ込んできた所をギルバートが守ってくれたらしい。


 互いに、いつ抜いたか分からない剣で押し合いをしていた。


「ケッ!」


 そう吐き捨てて、ラヴァルドは一旦距離を取った。


「あのムカつく野郎の計画を狂わせてやろうと思ったのによォ。・・・にしてもテメェ、オレ様の速度について来られるたァ驚いたぜ」


「ふん」


 ギルバートはラヴァルドに対し呆れたような反応を示すと、顔だけ氷戈に向けて


「ヒョウカよ、フラデリカが居なくともここは既に戦場であるぞ。気を抜くでない」


「・・・うん。ごめん、ありがとう」


「うむ。・・・それとアゾットよ。ラミィとヴェラートを連れてマーベラットの本拠地へ行くのだ」


 アゾットは氷戈の後ろで腰を抜かしたクラミィを見てから言う。


「・・・陛下は、如何いかがなされるのですか?」


「余はあの無礼者を処罰する」


「いけません。であれば護衛の私が奴と戦いま....」


「ごちゃごちゃうるェぞゴミども‼︎気を抜いてんのはどっちだァ!?『溶岩錐殺フェーゲライズ』!!」


 会話をさせる気など毛頭ないのだろう。ラヴァルドはまたもや奇襲に出た。

 詠唱と共に、氷戈含め5人の居る場所の中央辺りに巨大な円錐状の岩が地中から生えて来たのだ。その速度は非常に早く、当たれば串刺しは免れない。


 危機を察した氷戈、ギルバート、アゾットはそれぞれ別の方向へ回避できたが、腰を抜かしたクラミィと洗脳中のヴェラートは動いてはいない。だが、当たってもいない。ただ5人が岩によって分断されただけである。

 どうにも、これが目的だったらしく。


「まずは雑魚そうなテメェからだ‼︎」


 いつの間にかクラミィの前に移動したラヴァルドは、人差し指を彼女へ向け


「死ね。『岩漿熱線ラーム・シュタイル』」


「ヒィっ...」


「ラミィっ‼︎」


 クラミィの悲鳴にもならない悲鳴を掻き消し、ラヴァルドの指先からは目にも止まらない速度で赤い光線が放たれる。

 ギルバートは妹の名を叫ぶも、岩に阻まれクラミィとは対角に居るため物理的に助けに行くのが不可能であった。

 待ち受ける惨劇は必至か。


 数刻の静寂の末。


________________________。


「言ったよな。『仲間は死なせない』って」


「チッ。またテメェか青髪」


 クラミィの前には氷の盾が作られており、熱線の直撃を防いでいた。

 氷戈はその場から動いてはいないが、片手をその場にかざすことで瞬時に盾を形成したのだ。


 その後、間髪入れずに


「ぬんッ‼︎」


「クッ!」


 ドォォーン‼︎


 ラヴァルドは突然の頭上からの攻撃を交わす。

 岩を飛び越えて来たギルバートが剣を思いっきり振り下ろしたのだ。


 舞う砂埃から、鬼の形相でラヴァルドを睨むギルバートが現れ


「貴様はもう許さんぞ‼︎余が直々に切り伏せてやろう‼︎」


 雄叫びを上げるギルバートを見て、ラヴァルドはニヤつき


「ケケっ!いいじゃねェのその威勢。殺しがいがあるってんだァ!」


 2人は一触即発の雰囲気である。

 この中でギルバートは短く言い放つ。


「アゾット。ラミィを頼むぞ」


「・・・はい、承知しました。どうかご無事で」


 渋々の承諾ではあったが、状況が状況なだけにアゾットはすぐに2人を抱えマーベラットの方へ去っていった。

 ギルバートは、それを確認すると静かに言った。


「さて...罪に塗れたその身を、王である余が裁いてやろう。・・・来い、王笏『罪ニハ罪ヲ(ヴァンライヒ)』」


 その言葉と共に、ギルバートの右手には紫色に輝く神秘的な造形の杖がゆっくりと顕現した。

 これを境に、周囲には凄まじい圧が広まる。その出所はギルバート本人からか、握る王笏からか、はたまた両方からか。


 しかしラヴァルドはこれにも怖けず、むしろ笑みをこぼす。


「いきなり我成ガイナを出してくるたァ随分とあったまってんなァ⁉︎・・・行くぜ、『焼キ削ル者ヴァーフェン・キリング』‼︎」


 こちらは言葉と共に、右手そのものに変化が生じる。

 右腕の肘から下がみるみる変形し、焼き焦がれた包丁のような形となったのだ。溶岩で作られたそれは、肉を削ぎ、人を殺めるための形をしていた。


 静かに王笏を握るギルバートと自身の腕を巨大な刃に変えて前傾姿勢に構えるラヴァルド。

 両者の臨戦体制も長くは続かず....


「行くぞ罪人‼︎」

「死ねや雑魚がッ‼︎」


 本作の主人公さんを差し置いて、2人の本気バトルが始まるのであった。

いきなり最強格の敵と出くわすんだね....

氷戈じゃなく王様が相手するみたいだけど、大丈夫なのかね?

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