第五話
道中、何十体もの大量のゾンビの襲撃を受け、それらを撃退したアルフレッドらは周辺の調査を行った。
村が二つほど壊滅していた。無残に食い殺された死体が横たわり、村は死んでいた。
「これはグラッドストンの仕業か」
アルフレッドは言った。
「かも知れんな」エイブラハムが応じる。「こんな人里の集団でいきなりゾンビが発生するとなると、何者かの手が掛かっているかも知れん」
アルフレッドらは死体をゾンビ化しないよう火葬し、死者の冥福を祈った。
そうして一同は南国へ入りつつある。このまま進む前にハルファセという町に立ち寄った。
「懐かしいなあ。変わりはないようだ」
アルフレッドは言って鞍上から町を見渡す。
「確かに変わらんな」
エイブラハムも鞍上から言った。
「確かに、目ざとく付きまとう連中も変わりはないようですね」
ベルナールが言うと、フローラが問うた。
「つけられているのですか?」
「ええ」
ベルナールは頷いた。
「また盗賊ギルドの下っ端か何かだろう」
エアハルトが言って肩をすくめる。
「盗賊ギルドって?」
エメラインは首をかしげる。アルフレッドが応じた。
「盗賊たちの組合みたいなもんだ。ここの連中は盗賊ギルドの支部の者たちだ。まあ、向こうもこっちが冒険者だってことは分かっているだろうからな。下手な手は打ってこないだろう」
一行は宿をとると厩舎に馬を預けて酒場に向かった。ランチタイムの繁華街は賑わっている。
エメラインはアルフレッドから離れないようにその手を握っていた。
エイブラハムがとある一軒の酒場を覗き込んで、「ここにするか」と仲間たちに声をかけた。「金鷹亭」という店だ。
店内に入るとメイドがやってきて、「いらっしゃいませ」と声をかけてくる。
「六人だ」
「どうぞ、こちらへ」
メイドがテーブル席に案内する。
「みんなビールでいいか?」
エイブラハムが言って、それから食事をオーダーする。
「ランチはあるか?」
「今日はハンバーグとオニオンスープ、サラダとパンになるわ」
「じゃあそれをくれ」
エイブラハムはそう言うと、メイドにチップを手渡した。メイドは笑顔でエイブラハムにウインクして見せた。
「どうしてお金を渡したの?」
エメラインが問うと、
「チップだよ。まあ、慣例的なものかな」
エイブラハムは言って肩をすくめた。
エメラインは「町ってややこしいいわね」そう言って吐息した。
それからエイブラハムは、アルフレッドを伴って、店主のウルバーノに声をかけた。
「やあウルバーノ」エイブラハムが言うと、
「よお、エイブラハムじゃないか。生きてたかこの野郎。帰ってきたのか?」
「まあな」
「あれ? そっちのお前、アルフレッドだよな」
「ああ。久しぶりだな」
「北国では稼げたのか?」
「まあまあだよ」
「それで、また大勢の仲間がいるんだな」
「ああ。全員ベテランでね。縁があってな。それより、何か仕事はないか?」
「ベテラン六人か……となると」
ウルバーノは後ろの棚からファイルを取り出してページをめくり始めた。
「何とも言えんが、妙な案件が来てるな。ハイレベルの冒険者限定で、ダッシュウッド伯爵から依頼が来てる。詳細は会って面談をしてから話すと」
「何だろうな」エイブラハムは唸った。
「報酬は一千万マーネだそうだ」
「よし! その話乗った!」
エイブラハムは即答した。アルフレッドは苦笑した。
「一千マーネのためか?」
「もちろんだぜ! 一千万だぞ?」
「面談をしてからってことは向こうもそれなりの冒険者を求めてるってことだよな」
「まさに俺たちのために天から降ってきた仕事だぜ。エメラインも覚醒して戦力も大幅アップしたからな」
そうして、二人はこの話を仲間たちに話した。
ベルナールは慎重だった。長く生きているエルフはトラブルを回避すべきとの点からこの依頼には慎重だった。
「伯爵も私たちの力を見極めてから……というところでしょうが、それだけ依頼の内容は危険が伴う可能性があります」
「そんなことは心得ている」エイブラハムは唸るように言った。
「まあ、面談? くらいは受けてもいいんじゃないか?」エアハルトは言った。「無理そうだったら断ればいいしな」
「危険な仕事の可能性を捨てきれませんが、それを言ったらザカリー・グラッドストンと戦った先の仕事だって危険でしたからね」
フローラは言って肩をすくめた。
「私はどんな仕事でもみんなが行くなら行くよ。今は一つでも多く仕事したいしね」
エメラインは前向きだった。
「まあ、慢心するわけじゃないが俺たちにとって危険レベルの仕事はそう多くないはずだ。伯爵の話を聞いてもいいんじゃないかな」
アルフレッドは言った。
「よし、行こう」
エイブラハムは言って、決断をした。
一同は翌朝チェックアウトすると、ダッシュウッド伯爵の城に向かった。伯爵の城下町に到着したのは日も落ちようかという頃であった。パーティは宿をとってレストランで夕食を済ませると、その日は解散した。めいめい夜の時間を過ごし、翌日の伯爵との面談に備える。
それから翌朝。エメラインは部屋から出たところで、隣のフローラの部屋からエアハルトが出てきたのを見て、びっくりして部屋に戻った。エメラインは扉に穴が開くのではないかというほどに耳をそばだてた。二人のいちゃラブな声が聞こえてきて、エメラインは体が熱くなった。これって……みんな知ってるの!? エメラインはますます体が熱くなってきた。やがて二人の声は聞こえなくなった。エメラインはそーっと扉を開けた。誰もいない。
「はあ……」
エメラインは吐息すると、外に出てカフェでモーニングをとろうと町に出た。そこでカフェの外席にアルフレッドを見つけたので、自分もモーニングを頼んでからアルフレッドの向かいに座った。
「おはようアルフレッド」
「よお」
「あのさ……」
「何だ?」
「フローラさんて、エアハルトさんと付き合ってるの?」
エメラインが言うと、アルフレッドは笑った。
「何だお前、気付いてなかったのか?」
「みんな知ってるの?」
「そりゃそうさ」
アルフレッドは面白そうに言った。エメラインは赤くなった。
「じ、じゃあ……昨晩は……あんなことやこんなこと……」
「お前何変なこと考えてるんだよ」
アルフレッドは笑った。
「そんなことより、伯爵が何を言い出すのかが気がかりだ」
「そ、そうよね!」
エメラインは食事をしながらアルフレッドと仕事の話をした。