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王の身に潜む悪魔

 双方が動かぬまま、しばらく決闘はにらみ合いの状態が続いていた。


 プラントン側に動きは見られないが、こちらも彼に対して有効打がなかった。問題は、彼の中に潜んでいる人物が何者なのか。


 見物人たちが顔を見合わせ始めたそのとき、プラントンに変化があった。


「エインズ、といったな? その中にいるのは誰だ?」


 明らかにプラントンの人格ではない。


 まさか、乗っ取られた?


「エインズ王子には、今は引っ込んでもらっとる。わしの名はゼヴや。オマエさんは?」


 僕の口を借りたゼヴが答える。


「ゼヴ……か。知らん名だな。ルシフェルの一派か」


「おい、名乗ったんやから、そっちも名乗らんかい。それが礼儀っちゅうもんやろ」


「どちらの側についているか。それさえわかれば、名前などどうでもいい」


「じゃあ、オマエさんは名無しや。よろしくな、名無しさん」


 煽るようなゼヴのセリフが、僕の声を使って出てくる。


 あんまり変な喋り方するのやめてくれないかな……。それに僕、そんなに攻撃的じゃないし。


『お相手はどうやら、弟陣営のジェルドみたいですわね』


『あー、その話だけど、もうちょっと詳しく教えてくれない?』


 また知らない名前が出てきた。ルシフェルって誰だ?


『これは、わたくしたちジェルド族の間で起きている内乱の話ですわ。ジェルド族は代々、ある家系が族長の座を引き継いでいたのですけれど、今の代でその席を巡って兄弟間で争いがありましたの。兄の名はルシフェル。弟の名をルシファーと言い、ジェルド族はその二人の陣営に分かれて小競り合いを繰り返しているのですわ』


 身内同士の争いっていうのは、どこでも起こってるものなんだな……。


『わたくしたちは兄の側。つまり、ルシフェルサイドに属していて、あの――名無しさんは、どうやらルシファーサイドのジェルドのようですわね。つまり、敵同士というわけですわ』


 なんとなく、海の向こうの事情もわかってきた。だけど、遠く離れた土地で起きているいざこざで、どうしてジェルドの人たちはこんなところまでやってきたんだ? 正直な話、自分たちの問題は自分たちの領内で治めてほしいものだけど。


『その点に関しては、わたくしも謝ることしかできませんわね。本来であれば、わたくしたちもそうするつもりでしたの。ですけれど、予想以上にルシファー側の力が強かった。押されたルシフェル陣営のジェルド族は、わたくしたちを含め、ほぼ皆殺しにされましたのよ』


『そんな……。え? 今、わたくしたちを含めって言った?』


『ええ。言いましたわ』


「おい、この状況で、そんな話しとる場合とちゃうやろ」


 それもそうだ。気にはなるけど、今は名無しさんをどうにかしなくては。


 とりあえず、敵だってわかったんだったら、倒してしまえばいいんじゃないか?


「ええんか?」


『うーん……。プラントンも敵と言えば敵だし、この戦いには勝たなきゃならないし。もう躊躇する理由がないと思うんだよね』


「おっしゃ! そんじゃ、人目も気にせんでええっちゅうわけやな?」


『え、それはちょっと――』


「アホ! そんなん気にしとったら、ホンモノのジェルド相手に張り合えるわけないやろ!」


 僕が止めるのも聞かず、ゼヴは手に持った剣を地面に突き刺した。


 空いた手の平に、魔力による新たな剣が出現する。


「本気でやるつもりか。まだ力も戻っていないというのに……。まあ、それはお互い同じ話か」


 プラントンの目の色が変わる。彼はいまや、名無しさんなのだ。


 ……このネーミング、どうにかならないかな。まあ、名乗らないんだから仕方ないか。


 プラントンの手に持った剣が、仄かに濃い紫のオーラを帯びる。


 予備動作なしに急接近した僕たちは、互いの剣を激しくぶつけた。

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