表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/68

魔法を使う種族

『どんなもんや』


 ゼヴは自慢げに言ったが、心なしか元気がないように聞こえる。


『少し力を使いすぎましたわね』


 ミカ・エラも、いつもの気丈な物言いに覇気が感じられない。


 間違いなく、二人とも疲弊していた。


『せやけど、この程度でくたばるような相手やない。この体、もうちょっとだけ借りるで』


 あんなド迫力の戦闘を特等席で見た側にしたら、今からステージに立てと言われるほうがイヤだ。


『せっかくやから、わしらのこともちょっと話しとくわ。あの長髪野郎にいろいろバラされてもたことやしな。ええやろ、ミカ・エラ』


『反対したところで、わたくしに止める術はありませんわ』


 ……それはつまり、反対って意味だよね?


 お構いなしにゼヴは話し始める。


『わしらのおった大陸――わしらはメノアと呼んどるんやけど――そこにはな、大きく分けて4つの種類の人間がおるんや。1つはセディア人。古代セディア人の血を引く、魔法が使える種族や。次に、ジェルド族。これも魔法が使える。ただ、セディア人の使うもんとは性質が違うけどな。わしやミカ・エラもこれや』


 この2つは、レンの口からも聞いた名前だ。


『他のはどっちも魔法を使う能力はない。ノーレリア人と、グルシナ人や。やから、魔法が使えるってなった時点で、この世じゃセディアかジェルド、どっちかの可能性があるっちゅうことやな』

だからレンは僕にそれを訊いてきたんだ。まあ、僕自身はそのどれでもない、プリスダット人なんだけど。


『あのレンって人は、セディアなの? ゼヴがさっきそう言ってたけど……』


『恐らくな。まだ確証はあらへん』


 どういう違いがあるのだろうか。魔法って言うからには、思い通りのことが何でもできそうなイメージだけど……。


『2つの魔法は本質が違いますの』


 ここでミカ・エラが口を挟んできた。


『セディア人の使う魔法は、古くに神が分け与えたとされる神力しんりきの下位互換ですわ。体から導気と呼ばれるオーラを放って、それに様々な効果を付与しますの』


 ……なんだか難しい話になって来たぞ。つまり、魔法を放つ前に予備動作が必要ってことか?


『なかなか勘が鋭いやないか。その通りや』


 なるほど。と言うからには、ジェルド族にそれは必要ないってことだろうか。


『そうですわ。高貴なるジェルド族の魔法は、神力のそれに限りなく近いもの。魔力さえあれば、意のままに魔法を発動できますの』


 へえ、すごいじゃん。どっちかと言うと魔法って言ったら、そっちのイメージだな。


 てか、渋ったわりにすごい流暢にしゃべるじゃん、ミカ・エラ。


『い、致し方ありませんでしょ。もうわたくしたちは無関係というわけにはいかないのですから』


 思ったことが伝わったのか、ミカ・エラは咳払いをして言った。


『セディア人は、人によって得意な属性っちゅうのがある。火、水、雷、土、風、氷、それから無。まとめて七元属性って言うんやけどな、自分の得意な属性以外は、基本的に使われへんのや』


『それじゃ、レンの属性は――』


『ピンときたか? あの男は火の魔法を使いおった。一概にそれしか使えんってわけやないけど、違う属性を使えたとしても、あと1つくらいや』


 なら、火を念頭にもう一つの属性を警戒していればいいってことか。でもそれって、役立つ情報なんだろうか。


 魔法自体がそもそもどういうものかよくわかっていない以上、相手の使う属性がわかったことが戦況にどう有利に働くのか、イマイチわからない。


『属性はそれぞれに得手不得手がある。それさえわかっとけば、あとはこっちの行動次第や。ま、このあともうひと悶着あるやろうから、そこでよう見とったらええ』


 ゼヴが言い終わると、僕の足が一人でに動き出す。


『ミカ・エラ、準備はええか?』


『いいもなにも、行くしかありませんわ。悠長にしていたら、あちらも回復してしまいますもの』


 二人の戦意はまだまだ十分なようだ。


 僕はまた、最高のスリルと興奮を最前席で体感することになるのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ