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スピード&パワー

 2対1という最悪の状況は打開できた。少なくとも、当面の間は。


 ヌリマナスは倒れているが、気を失っただけだ。またいつ起き上がるとも知れない。彼が伸びている間に、もう一人を何とかしなければ。


 隙があれば逃げる算段も頭に浮かんだ。道を進めば、ルテアがいるはずだ。合流できれば逆にこちらが数で有利をとれる。


 だが、ルテアがすでに何者かと遭遇し、戦闘になっている可能性も考えられた。だとすれば、無暗に合流を急ぐのは得策ではないかもしれない。


 ……いや、ここで僕が止めるんだ。戦う術は心得ている。そりゃあ、まだまだ素人同然のレベルかもしれない。だけど、やらなきゃいつまでたっても守られる側のままだ。


「へえ。ヌーリを倒したからって、いい気にならないでよね。見た感じ、あんた、戦闘に関しちゃドのつく素人でしょ。動きがなってないもん。多少のスキルはあるみたいだけどさぁ、そんな行き当たりばったりのヤケクソスタイルが通用すると思ったら大間違いだよ」


 パルマは軽い足取りでステップを踏むと、一息にこちらへ突っ込んできた。


 武器がないなら、リーチではこちらに分があるはずだ。


 先手をとろうと、迫ってくるパルマに向かって剣を突き出す。


 外した!


いや、というより、彼女が避けた。一瞬、姿が消えたかのようにも見えたが、実際は身を屈めただけだった。しかし、暗さも相まって、そのスピードに目が追い付かない。


屈んだ姿勢のまま、パルマは一歩踏み込んだ。


「がっ!!」


 脳を揺らすような衝撃。


 パルマの掌底が顎を突き上げる。


 奥歯が砕けるほどのパワーだったが、かろうじて踏みとどまる。


「まだまだ!」


 続けて、パルマは胴に連撃を浴びせてきた。


 腹への打撃を立て続けに受け、痛みを感じると同時に吐き気を催す。


「おらあっ!」


 とどめは側頭部への回し蹴りだった。


 痛覚が吹き飛んだかに思えた。意識がフッと遠くなり、地面に倒れた衝撃で再び現実に引き戻される。


「ふうっ。なんてことないね」


 見下ろして言うパルマ。


 完敗だ。圧倒的な速さと力を前に、手も足も出なかった。


 揺らぐ視界の中で、立ち去ろうとするパルマ。その背後に、僕は幻を見たような気がした。


 ――アム?


「くたばれぇっ!」


「ひゃっ!?」


 アムリボーの強烈な横一閃が、パルマに当たったかどうかは定かではない。ただ、死角からの一撃が確実に彼女を怯ませたのは事実だった。


「逃げるわよ」


 次いで駆け付けたミラスに肩を支えられ、僕は立ち上がった。


「行け!」


 パルマはまだ立っていた。その奥にアムリボーの姿も見える。


「アム……!」


 名を呼ぼうとするが、かすれた声しか出てこない。


 ミラスに引きずられるようにして、僕は戦線を離脱した。

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