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魔法は何もつかえないけれど  作者: ちくちく
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戸惑い

城の居室で美味しいナネットのお茶を飲んでいると、やっと落ち着いて来た。


2人で森の家で暮らすことはもうできないらしい。

ではこれからどうしたら。


一般庶民の私がこの城の中で一体何をすればいいのだろうか。

そして、結婚? 私が? 誰と? 何の冗談だろうか。


目の前で美しい所作でお茶を飲んでいるフィルをじっと見詰めた。

「ん。どうした?」

小首を傾げて美しく微笑むフィル様。

(王子様なのよねー。こんなブサイクな私が傍に居る事が間違いなのに。戸惑いしかない)


「私。これからどうしたらいいのでしょうか?」

「もちろん、私のお嫁さんになる準備をすればいいんだよ」

「お嫁さんって。 準備ってなんなんですか?」

無邪気に笑顔を向けて来るフィル様に少しイラッとする。


「そうだね。君がこれから母上に付き合って上げれば凄く喜ぶと思うな」

まるで他人事の様な言葉に、思わずため息をついてしまった。


(そんな簡単な話なの? 私と? フィル様の傍には居たいけど。結婚って。

身分って、庶民って言葉知らないの? 忘れたの? 

こんな冗談としか思えない話なのに。真面目な話ではないわよね。

ただの悪ふざけでしかないわよね。皆でゲームをしているのよね。

ドッキリというか、私をからかって遊んでいるみたい。

フィル様もこんな話を普通に話して、私怒ってもいいよね。

美味しいはずのお茶菓子も喉を通らないのに、涼しい顔のフィル様が憎らしい)

ジト目でフィルを眺めていると、ドアがノックされた。


「マユリ。私よ。久し振り。元気にしてた? ジョイルと来たわよ」

黒猫のオニキスを肩に乗せたジョイルが笑顔で部屋に入って来た。


「まぁ。オニキス様とジョイル様。どうされたんですか?」

久し振りに2人の姿を見た気がして、思わず笑顔を向けた。

「うふふ。聞いたわよ。王妃様のお話。結婚相手探しするんだってね」

オニキスがマユリの肩の上に飛び乗って、その頬に頭を擦り付けた。


「冗談でも、面白がらないで下さい。」

思わず頬を膨らませて言う。

「面白がっていないわよ。申し込みに来たに決まっているでしょ」


(え? 今何て言った? 申し込み? 何? どういうこと?)

「マユリ。オニキスがもう興奮して『君をお嫁さんにしろ。遅れをとってどうする』と大変なんだよ。

私も独身だし、私自身も君は好ましいし、結構私は優良物件と言う奴だよ。

候補の1人にして欲しいな」

ジョイルがマユリの前に来て、ニッコリと笑顔でそう言った。


「何ですって? ジョイル様まで。酷いです」

「本気ですか? ジョイル殿。冗談ですよね」

フィルが慌てた声で聞いた。


「本気だよ。マユリはいい娘だからね。我が家では大歓迎さ。

特にオニキスとジョイスが賛成している女性なんて、今まで1人も居なかったからね。

皆で大事にするから、安心して我が家に嫁いでおいで。」

マユリに視線を合わせて笑顔で言い切った。


「止めてくれよ。これ以上話が大きくなるなんて。

相手がまた増えるなんて。私のマユリなのに」

フィルが頭を抱えて呟いた。


「信じられない。ジョイル様まで。

このゲームは止められないのですか?

私、もうどうしたらいいのでしょうか。分かりません」

マユリは眉を顰めて、横に居るフィルの腕を掴んだ。


マユリはジョイルに半分怒って真剣に話した。

「ジョイル様。悪い冗談です。子供だからって言っていい事と悪い事ありますよね。

これは冗談でも言ってはいけない事だと思います。

私は庶民です。結婚に何のメリットもない只の人間です。身分が違います。

止めて下さい。私をからかって楽しいのですか」


「マユリ。私は真面目に言っているよ。私も冗談でもこんな事は言わない。

君はこの気難しいオニキスに認められ、不思議な加護を持ち、美しい歌声で人を癒す。

フィルを助けるためにその身を投げ出す強い心と優しさがある。

黒い髪と黒い瞳の綺麗で可愛い娘だ。

我が家に迎えるのにメリットしかないだろう?」


普段言われ慣れていない誉め言葉の羅列に、マユリは顔を赤くして動けなくなってしまった。

(ウワー。こんな評価は私の事ではありません。何かの間違い。聞き違い。冷静に、冷静に)

頭の中はパニック状態で身体は固まったままだ。


「マユリ。これはいけない。もっと申し込みが増えそうだ。

ジョイル殿。マユリは私のも『違うよ。フィル。これからマユリは俺達の中から好きな人を見つける』」

いつの間にかジークとシリウスがドアの所に立って、フィルの声を遮って言った。


フィルの横で固まって顔を赤くしてるマユリを見てジークが笑う。

「おお。見事に真っ赤だね。マユリ。これから俺達と沢山話して、俺を選んでくれよ」

綺麗なウインクをして、マユリの頭を豪快に撫でて言った。


「ジークばかりズルい。私とは少ししか話していないし、一緒に過ごしたこともほとんどないね。

僕が一番損だよね。だから僕に一番沢山会ってね。僕の事をもっと知って、僕を選んで欲しい」

シリウスがマユリの手を取ってその顔を覗き込んで言った。


「君達、何だい。私の邪魔しに来たのかな}

ジークとシリウスにジョイルが苦笑して言うと、

2人は当然と大きく頷く。


「君達は王子なんだから、どこかのお姫様と結婚すれば?」

「ジョイル殿こそ、あまり年の差のない人にしたらどうですか?」

「そうだよ。マユリには俺達位の年齢が限度だ。ジョイル殿では話が合わないでしょう」

「あんた達、子供のくせに私のジョイルをおっさん扱いして、引っ込みなさいよ」


(4人の声が入り混じって、話の内容もカオスな状況だ。

何だろう。私のことを取り合っているのかしら?

この綺麗で立派な人達が。冗談でもあり得ない。)

あっけにとられて4人を見つめていると


次の瞬間、打ち合わせたように皆が同時にこちらを振り返った。

「で、マユリは誰を選ぶ?」

不思議に揃った声が聞こえた。


綺麗な紫色の瞳が目の前でキラキラとして、 キラキラとして…。

(もう、何? この訳の分からない状態。理解は無理。私がモテるなんて……)

マユリはキャパオーバーで、意識を失ってしまった。



(ああぁ。天井が見える。私。どうしたのかしら)

気が付いた時にはベッドに居た。

「ああ、気が付きましたね}

心配そうなナネットの顔が目に入った。


(何だか、私、洗濯機の中に突っ込まれたぬいぐるみみたいな気分だわ)

「マユリ。大丈夫?」

心配そうなフィルの声が聞こえる。


「あまり大丈夫ではありません」

「本当? ナネット! 急いで医者を呼んで!」

焦ったフィルがマユリの手を握って後ろに居たナネットに叫んだ。


「医師は必要ありません。このおかしな状況に頭がついて行かないだけです。

フィル様、一体皆さんは何を考えているのでしょう。昨日から私を妻にするって。

罰ゲームですか? 私をからかうの、面白いですか? もう嫌だぁ…… 」

両手で顔を覆うと、ポロポロと涙が溢れて止まらなくなった。


「違う。違うよ。マユリ。

前にも言ったでしょ。本当に皆は真剣なんだよ。

冗談でも簡単に結婚なんて口にはできない立場の人間なんだ。

皆本当にマユリをお嫁さんに望んでいるんだ。それは本当だ。


でも、でもね、マユリ。

誰よりも一番君を必要としているのは、私だ。

君が居ないと誰かに取り込まれてしまうんだからね。

それは、君も知っているでしょう?」








話しを考えているとあっという間に時間が経って居りました。

あと少しで終了です。

どなたかの暇つぶしにでも読んでいただけると嬉しいです。


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