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魔法は何もつかえないけれど  作者: ちくちく
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マユリのお仕事

今、ヘレネの前にはシオンとマユリが居た。


「今日は何を演奏しようか」

「私。ミニハープで歌ってみたいのですが」

「ああ、それも楽しそうだ。でも曲はどうしようか?」

「シオン様に教えていただいた曲が合うと思うのですが」

「そうだね。私もハープでデュエットしようかな」

「はい。よろしくお願いします」


「ああ、それと昨日はありがとう。次のおやつが楽しみだよ」

マユリは頬を少し赤く染めて、

「そう……ですか…。 はい。分かりました」

恥ずかしそうに小さく体を縮こませるマユリの姿に、シオンは小さく笑い声をあげた。


ヘレネは話をしている2人の姿を眺めていた。

仲良く肩を寄せ合って、楽しそうにあれこれ話し、何を言われたのか、今はマユリが頬を赤くして恥ずかしがっている。


(何とも幼い2人だこと。初々しいわ。まるで、おままごとのような。

でもシオンったらこのままで、どうするつもりかしらね。ここまでお膳立てをして上げたというのに、全く……。我が息子ながら、呆れてしまう。


マユリは素直で真面目な娘。音楽の才もある。

フィルを庇って我が身を投げ出す強い心も持っている。

私自身もマユリの事を気に入っている。

シオンの傍に置いてもいいと思っている。

それなのに、これは………。


シオン。このままではマユリはいずれあなたの手の中から、フィルの元に帰るのよ。分かっているのかしら?

私の様な捻じれた恋はしない方がいいのよ。

平和で幸せな恋を、それも成就する恋をさせてやりたいと思うのは、母故の想いなのかしら?何はともあれ、兄妹の様な2人をどうしようか)と考えていた。


そんなヘレネの思いも知らずに、シオンはこの心地のいい時間がいつまでも続いて欲しいと願っていた。

穏やかで満ち足りた美しい毎日をどうしたら、引き延ばせるのか目の前の娘に聞いてみたかった。

「どうしたら、フィルの所に帰らず、ここに居てくれる?」


横に立つマユリを見つめて口を開いた。

「………。マユリ」

「はい」

と満面の笑顔でシオンを見上げて、「何でしょう?」と答える。


一瞬口籠ったシオンが、その時言った言葉は

「そうだね。あの曲でいいと思うよ」

だけだった。


その残念な姿に、ヘレネと部屋に控えた侍女達全員が、思わずため息をついたり、空を仰いだことにシオンもマユリもまったく気が付くことはなかった。


一方マユリは、この美しい親子の傍で、何不自由なく過ごしていた。

見ているだけで眼福の2人の傍は、穏やかで毎日心地いい。

毎日シオンと音楽を楽しめるここでの生活は理想的だった。


でも、どこかで常にフィルの姿を捜している自分が居た。

そのため、フィルの声が聞こえたあの夜は、ただただ嬉しいばかりだった。

でも、それはフィルに対する自分の甘えだ。


一般人の自分が王子であるフィルの傍に居る事は、彼の邪魔にしかならない。

フィルに頼ってばかりで、暮らすなんて自立した大人とは言えない。

子供と変わりない。恥ずかしいことだ。

フィルの元から離れて、きちんと仕事をして1人だけで生活をするべきだ。

と、頭では理解しているが、また1人になると思うと、怖くて堪らない。


理性と感情、相反する想いに、心は乱れた。

そう考えると、この屋敷でヘレネ様の傍に居る事は、こんな自分にも仕事としての役割があると思えて、ずっとここに居たくなる。


しかし、元気になったヘレネ様の傍にいつまでも縋りついていては、優しくて美しい月の女神様に失望されて、嫌われるだろう。

尊敬するヘレネ様やシオン様に、いい子だと思っていて欲しい。

小学生が素敵な先生に憧れるようようで恥ずかしいが、そこは仕方がない。

だって月の女神様なんだもの……。


とにかく1度城に戻って、王様やフィル様に自分なりに頑張ったことを報告して、又考えよう。

その為にも最後の日まで頑張ろう、と心の中で拳を握りしめた。



そして1週間が過ぎた頃、ヘレネから城に連絡が入った。


「マユリが帰って来るって?」

「ああ、明日帰ってくると連絡が入った」

「じゃ、森の家に帰る準備をしないと」


「お前、マユリを置いて行かないと、城の皆から恨まれるぞ」

「関係ない」

「お前、性格変わったな」

「元の生活に戻るだけだよ。マユリと私の希望で、他の者は部外者だろ?」


「しかし、お前、きちんと変えているか? 2人で暮らすということはマユリにとっては良くないぞ」

「何故?」

「お前、いい歳のくせに……。まったく。男女2人暮らしだぞ。夫婦でもない。婚約者でもない。適齢期の娘が男と2人。愛人と思われるだろうが」

「何だって!。そ、そんな…。私達は。そんなわけないだろう」

「それが常識だろうが」


自分の常識の無さにフィルは思わずがっくりと項垂れた。

(確かに言われてみれば世の中はそう考えるだろう。

ジークの言う事は正しい。


浮かれて何も考えていなかった自分が恥ずかしい。

でも、そうなら、自分とマユリはどうすればいいのか?

まあ、帰って来たマユリと相談すればいいか。

明日は直ぐだし、急ぐこともない。これからマユリはずっと私の傍にいるんだから)

とマユリの帰城を聞いて、やっぱり浮かれて言った。


「明日は明日の風が吹く。マユリとどうするか、明日からゆっくり相談するから」

と笑顔でジークに言うと

「お気楽だな~。まあ、いいか。どうせ、城の連中がまた引き留めるだろうさ」

とジークも笑顔でフィルの肩を叩いた。


そして、次の日。

マユリはシオンと共に城に帰って来た。

そして2人で王の執務室に報告に行くと、そこには王妃やフィル達が揃って笑顔で待っていた。


マユリは王様に洗練された美しい所作で深々と頭を下げると、

「お久し振りでございます。王様。ヘレネ様がお元気になられた事をご報告いたします」

と言った。


「ヘレネは本当に元気になったのだね。シオン」

「はい。もうすっかり体調は良くなりました。母も喜んでおります。これも王様が送って下さったマユリのお陰です」

と隣のマユリに優しい目を向けた。


「それは良かった。マユリ。ご苦労だったね。しばらくは、城でゆっくり過ごしてくれ。皆も君を待っていたからね」

王が優しく微笑みかけて言った。


マユリはその言葉にまた深く頭を下げると、

「お心遣い、ありがとうございます。

でも私はすぐにヘレネ様のお屋敷に戻ります。ヘレネ様が専属のお話相手として、こんな私ですが、雇用して下さるとおっしゃって下さいました。それで、私はヘレネ様にお仕えしたいと思います。

皆様、今迄本当にお世話になりました。ありがとうございました」

と王様を見つめて言った。












お話が書けたら投稿しております。自分は楽しいのですが、時間はかかるし文章は本当に難しい。ちまちまと投稿しておりますが、上手な人が羨ましいです。でも最後まではもう少しと考えております。読んで下さったら嬉しいです。

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