出会い
初執筆、初投稿です。初めましてのため、手探り状態の初心者です。もしかして、私の話を読んでみてもいいと思って下さる奇特な方がいらっしゃると大変嬉しいのですが、それは難しいことと思っております。でも、これから頑張って書きたいと思っていますので、どうぞよろしくお願い致します。
「なんて綺麗」
世界は茜色一色に染まっていた。
海を見下ろす公園のベンチに座った少女が呟いた。
いつもより大きく見える夕陽が徐々に水平線に沈んで行く。
見慣れた海辺の町はまるで燃えている様だった。
「綺麗過ぎて、寂しい」
ふっくらとした少女の頬にホロホロと涙が流れ落ちる。
膝の上に置いていたタオルに顔を埋めた。
声も上げずに、肩を震わせて泣く少女はたった1人。
辺りを歩く足音や話し声も聞こえず、電車の走る音が遠く聞こえるのみだった。
ゆっくりと時は流れ、夕陽は海に沈んでいった。最後に名残りのような一筋の白い光が一瞬輝き、世界を照らして夕陽が消えて行った。
それから、どれ程泣いていたのか、泣き疲れた少女は違和感を感じてふと、顔を上げた。
「ここ…… どこ?」
そこに見慣れた風景はなかった。
目の前に広がっているはずの海辺の町並みはなく、夕方のはずだが、辺りは昼の明るさが満ちていた。
町の喧騒や電車の音は全く聞こえず、鳥の声と小さな水の打ち寄せる音がするばかりだった。座っていたはずのベンチはごつごつとした岩に変わり、横についた掌に冷たい石の感触を伝えている。
泣き過ぎて滲む視界は、酷くぼやけていたが、目の前には色とりどりの睡蓮が浮かぶ泉が広がっていた。そのほとりの岩の上に自分が座っている。
「何? どうして? 私、夢を見てるの?」
理解ができずに混乱する。周囲を見回しても美しい泉と周りを取り囲むような巨大な木々が見えるだけ。少女の声に答える者はなく、静まり返っていた。
自分が突然どこか知らない所に来てしまった。それを徐々に実感するが、心が受け入れる事を拒否する。
「夢じゃないの?何で。何で私が。目を覚ませ。私」
頬を叩くが目が覚めることはなく、自分の声に更に恐怖が募る。心細さに又、涙が溢れ、泣き出してしまった。
どれ程時間が経ったのか、よく分からないが、泣き過ぎて心も体も虚脱状態になった頃、不意に下の方から声がした。
「いつまで泣くんだ?」
一瞬,何が聞こえたのか分からなかったが、人の声が聞こえたと思い、顔を上げた。
声がしたと思われる方向を見るが、泣きはらした目ではよく見えない。それでも目を凝らして見れば、朧げに人の顔がこちらを見ていることが分かった。目を擦って見つめると紫色の瞳が辛うじて分かる。
黒く見える程濃い紫色の瞳は、まるで祖母の宝物の紫水晶の様だ。ぼやけた風景の中に紫色が輝いて見え、その美しさに目が離せない。
「なんて綺麗な……、紫色」と思わず呟いた。
その瞬間、紫色の双眸は閉じられ、顔は横を向いてしまった。
「待ちくたびれたから、どいてくれないか? 私は水から出たいんだが」
と怒ったような冷たい声がした。
その声に急激に冷静になり、思考が戻ってきた。今自分が見ているものがはっきりとしてきた。
水の中から、非常に美しい人がこちらを見上げていた。
「私の服がそこにあるんだ。早くどいてくれ」
横を見ると確かに服が置いてあった。
しかし、この状況に頭が追い付かない。異世界に居るらしい自分、目の前にはよく分からない怒った男の人。動きたいが、泣き過ぎて手足に力が全く入らない。早く動こうと気持ちは焦るが、立つこともできない。
「も、申し訳ありませんが、動けません。後ろを向いていますから、水から出て下さい。」と言うと何とか後ろを向き、両手で目を覆った。
すぐに水音がして、泉から人が上がり、着替えているような衣擦れの音がする。沈黙に耐えられず、思わず話し掛ける。
「あの、大変失礼ですが、ここはどこでしょう? 日本ってご存じですか。警察ってありますか? 迷子を保護してくれる所ってありますか?」
話している内に再認識した。(ああ、私、知らない世界に居るんだ。その上1人ぼっちの迷子なんだ。これからどうすればいいんだろう)恐怖で、思わず体が震える。
「日本も警察も知りません。ここはレリアの国です。」とすぐ近くから声がした。
「レリアの国……」
思わず、顔を上げて前を見れば、驚くことにすぐ目の前に人形の様な整った顔があった。白い肌の美しい人だが、その顔の左半分に火傷の様な黒っぽい痣があり、ブロンドの長い髪の左側半分はくすんだ茶色に変色していた。
「私は醜いでしょう? 綺麗なんて、何の冗談ですか?」
少し怒ったように紫色の瞳が顰められていた。
「痛みはないのですか?」
目の前にある美しい顔の痣は痛々しく、少女は無意識に左頬に手を伸ばし、そっといたわるように手を添えて尋ねていた。
「何を言っているんですか?」
相手は驚いたように言うと、目を見開き、じっと少女を見つめる。
「痛みはありません」
「よかったぁ。痛くないんだ。痛みはないんだ」
と嬉しそうに少女がホッとしたように微笑んだ。
「それで、いつまで私の頬に触れているんですか?」
知らない男の人の頬に手を当てていることに気が付いた。
「あ、 なんてことを。失礼しました。ごめんなさい」
と言うと少女は顔を真っ赤にして、急いで手を引き、体を小さく縮こまらせて頭を下げた。
もしかして、読んでくださった方。ありがとうございます。感謝しかありません。そして、続きを読んでもいいと思って下さるととっても嬉しいです。