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公爵邸にて

此処はパットリオ公爵領、公爵邸の庭園。

ふたつの影・・・アガサと背の高い青年がいた。

金と金赤の色が混じった髪の美青年だ。ドラゴン王子、ドレイクである。


「なあ、嫁御」

「違います」

「違うって・・お前の親御達は、我との婚姻を賛成してくれたぞ」

「私は承諾しておりません」

「だから婚約というヤツを、破棄していないのか」


ドラゴン王子の問いに、無視をする。


「相手が浮気したんだろ?」


だんまり。


「赦すのか?」


だんまり。


「見舞いにもいかないのはなんでだ?」


だんまり。


「恐いのか?」


だんまり。


「浮気するくらいだ、その女が好きなんだろうな」


だんまり。


「一目惚れってのは、誰だってある。我もだからな」


だんまり。


「・・・・・悪かった」


此処で初めてアガサはドラゴン王子に振り返る。


「お前が嫌なことばかり聞いた。言いたく無いのは分かっている、だから」


アガサの腰に腕を回し、引き寄せられて、顔が間近に迫る。


「我にしておけ」


そしてニヤッと笑った。


ぺチッ。

アガサは平手打ち・・でなく、デコピンをした。


「っ、たっ!」

「馴れ馴れしい。離してくださいな」

「ハハハハハ!!これはますます持って、好ましい!」

「ふん」


プイっと顔を背け、スタスタとアガサは歩き出した。

先に進むアガサの後ろを、ドラゴン王子はニコニコして笑ってついて行く。


二人の光景を見て、両親は・・・微笑んだ。

王子と一緒の時は、ただ慎ましく、おとなしく、王子の後ろに付き従っていた。

一歩離れて、そんな関係だった。相手が王子という立場だからだろうが・・

王子の隣に立ち、楽しそうに笑う、そんな普通の恋人達の様にはしていなかった。

アガサ・・娘は王子に遠慮しているのが分かった。

せめて王子が『隣においで』と言ってくれれば。

でも親が口出しするのはよろしいことでは無い、だから見守っていた。

公爵夫妻は恋愛で結婚していたので、娘にも好きな相手と結婚させてやりたかった。

だが、国王の勅命を無碍には出来なかった。

王子は聡明な子供だったから、期待したのだが・・・結婚間近で、裏切られた。

「パットリオ。全くもって、申し訳なかった」

国王陛下にまで頭を下げさせた、不肖の息子。多くの貴族も眉を顰めた。

だから、ドラゴン王子との婚姻は大歓迎なのだ。

今もほら、喧嘩腰の娘にドラゴン王子は余裕で笑っているでは無いか。

いつも大人しい、上品な娘が喧嘩腰とは!初めて両親も見る姿だ。

娘は王子と、果たして喧嘩などしたことがあっただろうか?

そういう面でも、ドラゴン王子が夫になるのが望ましいように両親は思うわけだ。

本音を言い合える相手でないと。ふたりは長く付き合って行くのだから。



ドラゴン王子が帰り、アガサは自室のソファに横になり、先ほどの会話を思い出す。


「だから婚約というヤツを、破棄していないのか」


確かに・・婚約破棄を私は承諾していない。

周りは皆さっさと破棄してしまえと言う。あんな王子など捨て置けと。

そうするのがいいとは思う。

でも私が頑張った、10年が無駄だったなんて思いたく無い。


「相手が浮気したんだろ?」


浮気。浮気をした。薬のせいかもしれないけど・・

しかも婚約破棄を突き付けられた。薬だけの所為?

心の奥底で、やはり私を愛してはいなくて、薬でそれが表に出てきた、それだけなのかも。


「赦すのか?」


赦すも何も・・・ああ、大勢の人の前で言わなければ良かったのに。

私のためにも、ミドラ様のためにも。軽率では済まない事態になってしまったもの。

それよりも、ミドラ様の父上である陛下、私の両親、他の人達を幻滅させた、その点が心配だわ。


「見舞いにもいかないのはなんでだ?」


・・・・。行けない。ミドラ様が、あの・・あの女と・・・

嫌だ。もう私は、ミドラ様の傍に寄るのも悍しい。不潔。

私とはハグだって滅多にした事もない。接吻もまだなのに。あの女とは・・

私には魅力が無かった、そう言う事なのだろう。たった二日の女に私は・・負けたのだわ。


「恐いのか?」


・・ええ。恐いわ。

あの時の様に弾糾されるかもしれない。罵られるかもしれない。

面と向かって『お前など嫌いだ』と言われたらどうしよう、そう思う自分がいる。


「浮気するくらいだ、その女が好きなんだろうな」


薬を盛られていたとはいえ・・・そうなのかもしれない。

私はミドラ様にとって、なんの魅力も無い娘だった。そうなのだろう。


「一目惚れってのは、誰だってある。我もだからな」


ああ、衝動的な、心引きつけられる思い。体験したことは無いから、しかも一瞬でなんて。

私には理解できない。理解できないから、ミドラ様を理解出来ないのだろうか。

私は1日1日、ゆっくりと相手を知って、それから心を寄せる。そんな恋愛しか出来ない。


だから・・・

私は・・・


「可愛げが無い娘だから・・・だからミドラ様に・・避けられたのだわ」


涙がポロ、ポロと零れる。


ああ、なんだ。私・・・今更気付いたわ。


「ミドラ様が・・好き・・なの・・」


だった、とは言わなかった。

自分の漏らした声を、また考えて・・・


今も未だ、彼が好きなのだと、ようやく納得して、自覚したのだった。


「でもミドラ様は・・・私を・・・嫌っている・・・」


日が暮れて、部屋も真っ暗になっても、アガサはソファに寝そべっていた。

涙も枯れて、今は頬の涙跡も乾いている。


ずっと自問自答している。


彼が好きだが、彼は好きなのか?

好いてくれるなら、全て赦そう。もちろん反省はして頂く。


「んふふっ、やだ、私ったら・・・こんなにミドラ様が好きだったなんて」


自分でも知らなかった思いに、笑ってしまった。


「さあ、明日から行動しなくては」


ソファから勢いよく体を起こし、アガサは立ち上がった。



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