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リーシェと妖精さん達の会議録  作者: ユーカリ
1/3

01 出会いは突然に

ゆっくりと投稿していく予定です。

よろしくお願いします。

 太陽の光を受けて輝く金色の髪に、穏やかな草原を思わせるエメラルドの瞳。

 まるで物語から飛び出してきたような王子様の姿に、リーシェの瞳は釘付けになった。


(……すごく綺麗な人。まるで妖精さんみたい)


 王妃様に手を引かれてゆっくりとお茶会の会場に姿を現したのは、ラオフィリス王国の第一王子であるレイモンド・ライオネリア。七歳になったばかりのリーシェよりも大人びた王子様は会場中の視線を独り占めにしていた。


 会場にいた令嬢達は一様に頬を染め、王子様に向ける視線にも熱がこもる。

 リーシェも例外ではなく、王子様を一心に見つめていた。幼いリーシェの頬は赤く染められ、小さな胸は高鳴った。


 そして、()()()()()()()()()()も王子様を熱心に見つめていた。

 『……美しい』

 『王子様素敵!』

 『かっこいいですわ!かっこよすぎですわ!最高ですわ!』

 『…………やっぱり乙女ゲームの世界か……。……ただのファンタジーなら良かったのに……』


 三つの光がリーシェの周りを自由に飛びまわる一方、一つの光が不安そうに漂っていた。


◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇


 「――お兄様、庭園にはいろいろな花が咲いているのですね!あちらの方にも行ってみましょう!」

 「リーシェ、慌てたら危ないよ」


 話は少し遡る。

 フェリクス侯爵家の第二子としてリーシェが誕生してから五年の月日が経ったある日、リーシェは三歳年上の兄ラルフと庭園を散策していた。

 病弱だったリーシェが庭園に足を踏み入れるのは、これがはじめてのことだった。そのため、リーシェにとって見るもの触るもの全てが新鮮であり、心がわきたつのを抑えられなかった。

 ラルフと手をつないではいたが、その手をぐいぐいと引っ張っては思いつくままに、庭園中を歩き回っていた。


 そんなリーシェであったが、ふと向けた視線の先に、淡い赤色の光が漂っていることに気が付いた。強烈な光を放つわけでもなく、やさしく穏やかな光。リーシェは立ち止まってその不思議な光を眺めていた。


 「……リーシェ?急に立ち止まってどうしたんだい?何か気になるものでもあったかい?」

 「お兄様、あの赤色の光は何ですか?」


 リーシェが指さす方向をラルフはじっと見つめていたが、しきりに首をかしげていた。そんなラルフの様子を見て、リーシェは改めて赤色の光の方向を見たが、依然として光はそこに存在していた。


 「――お兄様、あそこにある赤い光ですよ。ふわふわって浮いてます」

 「……本当に赤い光なんてあるのかい?僕にはそんな光があるようには思えないのだけれど……」


 ラルフからの胡乱な視線を感じて、リーシェは慌てて振り返り、赤い光を確認した。しかし、赤い光はどこにも見当たらなかった。これにはリーシェも首をかしげるしかなかった。


 (さっきまで確かにあそこにあったはずのに、あの赤い光はどこに行ったの?)


 その後もリーシェとラルフの散策は続いたが、赤い光を見ることはなかった。夕食を食べるころには、リーシェも赤い光のことなどすっかりと忘れてしまっていた。

 リーシェが赤い光のことを思い出したのはベットの中でまどろみ始めたころだった。


 (あの赤色の光は結局なんだったのかな?きれいな光だったけど)


 庭園で眺めていた薔薇も美しく鮮やかで、人を惹き付けるような赤色だった。一方で、淡く輝いた赤色の光には、穏やかな温かさを感じた。リーシェには、その温かさが心地よいものに感じられた。


 「――やさしい感じの光だったな」

 『それは私のことですの?私のことですの?』


 突然、女性の声が聞こえてきた。

 その声は楽しげで、心なしか弾んでいる。


 『無視しないでくださいまし!無視しないでくださいまし!私のことですのよね?』


 まどろみの中にいたリーシェであったが、急速に意識が覚醒した。リーシェ以外が寝室に立ちよっていないことに気が付いたからだ。


 「――誰?」

 『ホムラですわ!ホムラですわ!今日お庭でお会いしましたわ!』


 リーシェの視界に赤色の光が入ってきた。その光はリーシェにとって見覚えのある光だった。声の発生源も赤色の光からだった。


 「ホムラ?」

 『私の名前ですわ!かっこいいですわよね!かっこいいですわよね!』


 赤色の光――ホムラは自信満々に言った。リーシェの目の前までやってきた光の中には、勝ち気な少女がいた。赤色の髪に瞳で、満面の笑みでリーシェをのぞき込んでいた。


 「……え、えと、ホムラ様?」

 『ホムラでいいですわ!』

 「で、では、ホムラ。私はリーシェ・フェリクスと申します。私のことはリーシェとお呼びください」

 『リーシェですわね!リーシェですわね!』


 ホムラはより一層笑みを深め、リーシェを中心に飛びまわり始めた。暗がりを照らす仄かな光が幻想的で、リーシェはしばしその光景を眺めていた。しかし、ふと確認しなければならないことを思い出した。


 「ホムラはどうしてこちらに来たのですか?」

 『リーシェのパートナーだからですわ!パートナーだからですわ!』


 ホムラは指を突き付けながら、リーシェに宣言した。


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