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ヘアゴム

 入学式だけなので早めに終わるだろうとはわかっていても、やはり緊張は隠せない。周りをきょろきょろしてしまうし、おずおずと他の新入生の後を付いて校門をくぐったりで学校について間もないというのに迷子の子猫のような有様である。誘導していた先生に体育館で名簿と席位置を教えてもらいやっと一息ついたところだ。


「ん?なんだろ……?」


 目線が下を向いていたせいだろうか、靴を学園指定の上履きに履き替える時にふと、目の前に落ちていた物の存在に気が付いた。それはおそらく髪留めであろうか。ヘアゴムにキャラクターの付いたなかなか可愛らしいものだった。僕は、髪は長めだけど結えるものは一つも持っていなかった。欲しいとは何度か思ったものの買う理由が見当たらなくて諦めた。男の僕にとってそれはどうやっても必要あるとは言えない代物。しかしながら目の前に落ちている落とし物をどうすればいいのか見当がつかない。一度中学生の頃教室の掃除中にヘアゴムを拾ったことを思い出した。持ち主に届けたら安物だから捨てていいとそのままゴミにしてと結局受け取ることはしなかった。

 

まずこの髪留めを拾うべきかでまず悩んでしまった。が、結局のところ拾ってしまうことになる。見つけた以上放置することもできなかったし、その髪留めが可愛かったからというのも理由の一つだった。しかし流石に握ったまま入学式に臨むのもどうかと思うし、できることならすぐにでも近くの先生か持ち主へ届けて、すぐにでも自分の席について緊張する心をほぐしたかった。幸いにも、その落とし主はすぐに見つかった。様子から見るに落としたことにすぐ気が付いて周囲を探していたようだ。


 「あ、ごめん。それ私のヘアゴム!!よかったーー。」


 その時、僕は生まれて初めて運命というものを知ってしまったのかもしれない。いや、運命なんて今の一度も信じたことがなかった。こんなことを思うなんて想像していなかった。入学初日に運命的な出会い。あるはずもないと散々あしらってきた事象が僕の目の前で起こり、そして私と彼女を引き合わせたと。

 

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