第五話 治療と彼らの生き方
ゆっくりと云ったのにほぼ毎日投稿
理由、書き留めが多すぎたからです(笑)
「一日で治るよ…」
「よかったね零耶」
任務終了後、零耶は右足の治療のため、医務室を統軌と共に訪れていた。左京と右京は任務の報告書(2種類)作成、玲御は任務で料理担当の3人がいないため、数人と昼食を作りに行っている。
医務室に置かれたベッドに腰かけている零耶は包帯が巻かれた右足をブラブラさせる。その隣には統軌が座っている。
「わりぃな、獅雨」
「大丈夫。これが任務だからね…外よりは医務室がいい……」
「こら」
2人の前の机に座っていた少年がため息混じりに言うと統軌が少年の方へ行ってその頭を軽く小突いた。少年は少し不機嫌そうに彼を見上げる。が、欠伸をかましたので機嫌が直ったようだった。その欠伸が感染し、統軌も欠伸をかます。それに零耶が笑い、それにつられて2人も笑った。
その時、医務室の扉が横に開いた。そこから入って来たのは大きな白い虎だった。その虎は少年の元にゆっくりと歩いて行くとその足元にドサッと座り込んだ。少年がその虎の頭を嬉しそうに撫でると虎も嬉しそうに微笑む。
「ハハハ、ホント、仲が良いな」
「だよねー」
「だって、僕と"白"だもん……ねぇ"白"」
「ガゥ」
微笑ましそうに見守る2人の言葉に少年が自慢気に、それでいて嬉しそうに言うと虎もそうだと云うように小さく鳴いた。
獅雨と呼ばれた少年は白群色のショートで瞳は青竹色。白い百合の花の髪飾りをしており、その髪飾りの蔦が左のこめかみに軽く巻き付いている。服は紺色のブレザーに青のネクタイを緩めにしめ、ワイシャツでボタンを数個あけている。下は茶色に近い、キュロットのような半ズボン。濃い茶色のローファーに濃い青のソックスを合わせている。ソックスの上部分には水色の線が入っており、そこから水色の糸が出ていて(解れているのではない)ゆらゆらと揺れている。
獅雨は顔が女顔であるため政府の人などには女の子と間違えられて話しかけられた事がある。
獅雨が椅子から降りて虎、"白"の首元に抱きつく。この白虎は獅雨の武器であり、半身である。"白"は獅雨の頬を優しく舐めた。それに獅雨はくすぐったかったのか身をよじった。
零耶はそれを見て、羨ましそうに微笑むとベッドから降りようとそーっと右足を床につける。が、ビリッとした微かな痛みが床に足がついた途端に全身を駆け巡った。それが顔に出ていたのか統軌が慌てて零耶の元にやって来ると肩を貸す。
「………零耶兄ちゃん、まだ痛い…?」
「嗚呼、ちょっとな」
「無理しないでよ。おぶって行こっか?」
「統軌は俺のプライドを傷つける気か」
ていっと零耶が統軌に軽くチョップをかますと彼は痛そうにしながらも悪戯っ子のように笑った。わざとか。そう考えた零耶は訝しげな表情で統軌を軽く睨んだ。それに当の本人ははぐらかすように笑った。
と、その時、お昼を告げるチャイムと共に女性の声がスピーカーから聞こえてきた。
〈昼飯出来たよー今日はカレーだ。早い者勝ちさぁ急げ!〉
「姉さん達のカレーかぁ。甘口あるかなぁ」
統軌がそう言って嬉しそうに笑う。先程の女性の声は統軌の姉である。
獅雨は"白"から離れ、立ち上がる。とそれに倣って"白"もゆっくりと上体を起こし、零耶に近づいて来た。
「え、ん、なに?」
「…時間短縮。零耶兄ちゃん乗せて行くから。"白"」
「ガゥ」
"白"は零耶の服の袖を掴み、乗るよう指示した。少ししゃがんだ"白"の上に零耶が戸惑いつつもゆっくりと、統軌の力を借りて座る。フカフカとした、獣の毛並みが心地よい。零耶がしっかり乗ったのを確認して"白"は立ち上がる。立ち上がる振動に零耶は慌てて毛を掴んだ。
「そんじゃ、お昼ご飯にレッツゴー!」
「ゴー!」
統軌が拳を突き上げて先頭を歩く。それに獅雨が控えめに拳を挙げて続き、最後に零耶を乗せた"白"が続いた。
ちなみに3人が食堂に行った時は皆が既に集まっていて大混雑していたと云う。
…*…
その翌日。零耶の右足の傷は完全に治り、任務に支障をきたす事はなかった。その日の任務は昨日と同じ5人で、"五天王"からは暫くパーティーを固定すると云うことで彼らはそうなった。
5人は彼らに不満などない。零耶と玲御は瞬発力があるので敵を翻弄するのに適しているし、統軌はスパイ活動などの隠密行動が得意なので敵の裏をかける。そして左京と右京の攻撃力は凄まじい。3人よりも生まれたのが早かったせいか任務に慣れているので司令塔とその補佐には持ってこいだった。
彼らは一応、リーダーを右京、副リーダー兼補佐を左京とした。そうなったことで統軌が「報告書書かなくてすむー!」と喜んだ時は右京から首絞め(緩め)をお見舞いされていたが。
そんなこんなで彼らは政府からの任務を遂行して行った。それでも政府の、人間からの評価は変わらない。別にそんな事、どうでも良い。自分達は自分達なりの生き方があるのだから。