第2話_エクストリーム部活!(3)
「見つけたぞ舞桜! オレ様も部活作ったから覚悟しろよ!」
廊下の向こうからバカが……じゃなくて、バカデカイ声で叫んだハルキ。
夏希は不思議な顔をした。
「邪道くんがエクストリームスポーツの達人?(何の?)」
邪道じゃなくて覇道です。
雪弥が説明してくれた。
「彼はエクストリーム・借金、リアル鬼ごっこ、リアルかくれんぼ、そしてエクストリーム・貧乏の達人だよ」
どれもあまり楽しそうじゃない競技だ。むしろ好んでやりたくない。
「貧乏で悪かったなこのブルジョワどもめ!」
ハルキは怒った様子で近づいてきた。
「お前らに貧乏の苦しさがわかってたまるか。誕生日プレゼントもらった一〇円ガムを、大事に一週間かみ続けてたのに、ある日起きたら髪の毛にくっついてた苦しみがお前らにわかるのか!」
わかんねーよ。ガムなんて一日ですら噛んでらんねーよ。K県在住のししゃもにゃんは同じガムを六時間くらいなら噛んでられるらしいがなっ!
勝手に雪弥はハルキ家の借金事情を話しはじめた。
「彼の一族は膨大な借金を抱えていてね。噂では小さな国くらいの国家予算は超えるとかで、返す目処なんてないらしいよ。彼も相当な達人だけど、もっとすごいの本家の長男に生まれた彼のいとこさ」
ハルキとは昔からの知り合いらしい舞桜だが、初耳だったことがあった。
「ほぅ、貴様にいとこがいたとは初耳だ」
「いちゃ悪いかよ。本家に関わると厄介だからあんま会ったことないし、あいつはオレ様のライバルだから会いたくもねーよ」
「ふむ、ライバルとはなんだ?」
「オレ様の夢は勇者になること、あいつの夢は魔王になることなんだと」
舞桜は微笑んだ。
「なかなか面白い、魔王とな。そいつの名前は?」
「覇道ヒイロだよ」
「覚えておこう(ヒーローなのに魔王を目指しているのか。真物ならいつか会うことがあるかもしれないな)」
勇者とか魔王とか魔王とか、なんですか人気職業なんですか?
あまりにも目指している者の数が高くありません?
そうそう、そう言えば新しい部活がどうかって話はどこ行ったんですかハルキさん?
「おっ、忘れるとこだったぜ。オレ様新しい部活作ったからな、名付けてアンチ舞桜部だ!」
敵対対象を名指しですか(笑)
舞桜はクルッと背を向けて歩き出した。
「さて、部活の視察をせねばな」
「おいコラッ、逃げんのかバカ野郎!」
ハルキの罵声に舞桜は微かだが眉をピクッと動かした。
「逃げるだと……私がか?」
振り返った舞桜。その表情はいつもと変わらない。しかし、どこか違う。
舞桜はどこからか出した刀を抜いた。
「決闘の申し込みと受け取って良いのか、邪道?」
「おう、決闘でもなんでもしてやるよ!」
威勢よく声を張ったが、ハルキの腰は完全に引けていた。
なんでこんな展開になってしまったのか理解に苦しむ。だが、ケンカが起っていると言うことは確からしい。
夏希は不安そうな顔をして、助けを雪弥に求めた。
「とめないと……」
「大丈夫だ、天道は強いから手加減もできるから(さて、覇道の一族がどこまでやるか、お手並み拝見といこうかな)」
微かだが雪弥は不適に嗤った。だが、それを見た者はいない。
ハルキは握った拳に汗を掻いている。その表情を舞桜は見とった。
「大胆は勇気を、臆病は恐怖を……それで私に勝つつもりか邪道?」
「うっせぇ!(正面からいったら絶対オレ様が負ける……わけねーけど、万が一っていう可能性もあるからな)オレ様からケンカ売ったんだから、勝負の方法も決めていいよな?」
「好きにしろ」
「エクストリーム・貧乏話で勝負だ!」
なんだそれーッ!
「その勝負受けた」
受けるのかーッ!
どう考えても読んで字のごとくの競技だ。ちょ〜〜〜〜っお金持ちの舞桜に勝ち目などあるのか?
雪弥はなぜかため息を落とした。
「ふぅ。僕は視察の続きがあるから行くよ(とんだ見込み違いだったな)」
歩き去ろうとする雪弥に困った顔で手を伸ばす夏希。
「ちょっと鷹山くん!(……残されたあたしにどうしろと)」
さあ?
どうしましょう?
ハッキリ言って夏希にはどうすることもできなだろう。ここはあまり巻き添えを食わないように、そーっと見守るのが得策っぽい。
ハルキがビシッとバシッと先制攻撃を仕掛けた。
「オレ様から行くぞ!」
「掛ってこい」
「自分の髪と雑草を一緒に炒めて喰おうとしたことがてめぇにあるか! 異臭で死にそうになるんだぞ!」
あー、髪の毛を燃やすと臭いよね……って、オイ!(ノリツッコミ)
衝撃発言に固まっていた夏希だったが、どうにか口を開いてクエスチョン。
「なんで髪の毛?」
「オレ様はオレ様は……ビーフンってヤツを一度でいいから食べてみたかったんだ。世界三大珍味と呼ばれるビーフンをな!」
三つのどれと勘違いしてるんだよ……。
しかもなんか舞桜も勘違い。
「ビーフン……そんな珍味があったとは初耳だな。私も食したことのない食材だ」
舞桜はきっとハルキとは違う意味で食べたことがないのだが、勘違いの連鎖は続く。
「けっ、てめぇも食ったことねーのかよ。金持ちのクセしてたいしたことねぇーんだな(舞桜も食ったことねぇってどんだけ高級なんだよ、チクショー)」
だから、違うから。
金持ちと貧乏の間に挟まれた中流家庭の夏希。
「ビーフンだったらいつもで食べさせてあげるけどぉ」
「本当かっ!」(舞桜)&「マジかっ!」(ハルキ)
二人の驚きの声が重なった。
あまりの衝撃だったのか、ハルキは打ち震えながら眼をギョッとさせながら、汗をだらんだらん滝のように流している。
「て、てめぇいったい何もんだ!(舞桜ですら食ったことねぇビーフンを……)」
「えっ……別に……(何者とか言われても困るんだけど)」
口ごもる夏希の体が突然舞桜に抱き寄せられた。
「私の婚約者だ!」
そーゆーことを聞いてんじゃありませんよーっ。
ハルキはハッとした。
「そうか……てめぇらグルだな。二人してハメる気だな!」
その解答に達した解答式を公開して欲しいのですが?
グルだと思われるのは舞桜の態度がアレなので仕方がないとして、ハメるって何を?
舞桜が怪訝な顔をする。
「グルとは失敬な。勝負は私とお前の一対一だ」
話が若干噛み合ってないように思えますよー、っと。
ハルキは再びハッとした。
「しまった、それが作戦だったんだな汚い野郎め。貧乏話でオレ様に勝てないと踏んだてめぇは、話をそらしてうやむやにするつもりだったんだろ!」
「この私が決闘を放棄するわけがなかろう。それにいつ私が負けると決まったのだ?」
財力の差で圧倒的不利かと(一般的には勝ち組みですが)。
舞桜は鼻で笑う。
「ふっ、いいだろう。私の話を聞くがよい!」
ハルキと夏希は息を呑んだ。どんな貧乏トークが繰り出されるんどあろうか、この舞桜の口から?
「これを見よ!」
と、言って取り出したのは五円玉……じゃないなぁ。
「これは寛永通宝という江戸時代に流通していたコインだ。一文銭の『銭』とはつまり円の一〇〇分の一である。円よりも安い、これこそ貧乏に相応しいではないかっ!」
はっ?
が、思いのほかハルキはダメージを受けたようだ。
「なぬーっ!? くっ……一円よりも安い通貨があること知らなかったオレ様は、セレブだったのかッ!!」
違うから安心して♪
あまりのある意味壮絶な戦いを前にして、夏希は唖然としてしまっていた。
「(……この人たちっていったい)」
BA・KA!
舞桜の常識知らずは今にはじまったことではないが、常識とかってレベルじゃないぞ。
敗北感たっぷりで床に手と膝をつけてうなだれるハルキ。
敗者に手を差し伸べる舞桜。
「挫折とは成功への茨の道だ。勇気を捨てず信じて歩み続けることが大切なのだよ、さあ立ちたまえ」
差し伸ばされた手をバチーン!
っと、叩いてハルキは立ち上がった。
「チクショー覚えてろよばーか!」
今日も心の汗を流してランナウェイ。
負けるなハルキ!
頑張れハルキ!
そんなわけで、どうやら勝負は舞桜が勝ったようだ。
さーってと、そろそろ本題に戻らなきゃね。
えっ、みんな本題を忘れちゃったの?
やだなぁ〜、本題っていうのは……。
「探したわ、天道さん」
ゾッとするようなダークボイス。その場にいつの間にか立っていた菊乃。まるで怨霊ですね!
菊乃は言葉を続ける。
「屋上で化け物が暴れているわよ」
……はい?




