第1話_エクストリーム生徒会選挙!(6)
ついに過酷なエクストリーム選挙は終わったのだ。これでジャングルに取り残された生徒たちも、どーにか無事に救出されるだろう。
あとは生徒会役員の任命式を残すばかり……と、先走ってしまったのだが、なにやら大会本部がざわめいている。
漏れてくる声を聴くに、
『ビデオ判定が』どーとか、
『天道様が一位ではなかった場合、責任を取らされるのは』どーとか、
『しかし、天道様は正々堂々を望まれているのだから、ビデオを見せないわけには』どーとか、
『ええい、とにかくビデオを破棄してしまえ!』と言った声が漏れてきた。
なかなか順位を発表しない大会本部に、ついに舞桜本人が口を挟んだ。
「どうしたのだ、早く順位を発表して、任命式をはじめようではないか?」
声を掛けられた本部役員Aがたじろぐ。
「そ、それがですね……微妙な判定が……その……ありまして……ビデオ判定の必要があって……ですね」
「ならば早くビデオ判定を放送すればよい」
「は、はい!」
背筋を伸ばして元気よく!
絶対者の命令に逆らえるはずもなく、仕方なくビデオ判定の映像が映し出されることになった。
映像は特設会場のビッグスクリーンや、アトランティス全土のテレビ、宇宙人が受信した電波にも映し出された。
スローモーション映像の一部始終。
――夏希を抱きかかえてゴールテープを切った舞桜っぽい。
映像を見ていた舞桜の表情が曇る。
コマ送りでもう一度見てみよう。
――舞桜に、抱きかかえられて、ゴールテープを、切った、夏希。
凍り付いた舞桜の横にいた夏希がボソッと呟く。
「……あっ、あたしが先にゴールしてる」
ガ〜ン!!
巨大な鉄球に脳天直撃されたように舞桜が大きく足下を崩した。
どこからか聞こえる嗤い声。
「ふふふふふっ、残念だったわね……副会長の天道さん」
見事に嘲笑った菊乃。
放心状態の舞桜が地に手を付く中で順位がアナウンスされた。
《一位生徒会長、岸夏希。二位副会長、天道舞桜。三位書記、鷹山雪弥。四位同じく書記、魅神菊乃。五位会計――ゴリラ!》
「ハァ〜〜〜ッ!?」
大声をあげたのはハルキだった。
「ちょ、待てよ。五位はオレ様だろ、学費免除はオレ様だろ!」
本部に殴り込みに行こうとしたハルキにゴリラが襲いかかる。
「やっ、やめっ、やめろーっ!」
[自主規制]。
ここで夏希もある重大なことに気付きハッとする。
「……っ、あたし会長なんてできない!」
再起不能の舞桜。黒い邪気を放つ菊乃。この中では唯一のまともさんの雪弥。そして、ゴリラ。
どーやって生徒会を運営していけばいいのかと?
アレよアレよというウチに、記者会見らしき会場に夏希は引っ張り出され、やる気のないカメラマンと、やる気のないインタビュアーに囲まれていた。
「会長として、これからの意気込みを適当に言っちゃってください」
マイクを向けられた夏希が口ごもる。
「ええっと……(えええ、なんて答えればいいんだろ)」
「一位には副賞としてどんな願い事でも叶えてもらえますが、金ですか?」
「えっ(決めつけ?)、あのぉ〜、そのぉ〜(いきなりそんなこと訊かれても)、願い事は……」
誰かが夏希の耳元で美声を囁いた。
「舞桜様に会長職を譲ると願えばいい」
「そう、それにします! 天道さんに会長を譲ります、それがあたしの願いです!」
夏希の願いは舞桜の耳に届いた。
「夏希ーっ! さすが我が伴侶となる女だ、愛しているぞ!」
ジャンピング・キッス!
いきなり飛びかかってきた舞桜に夏希は抱きつかれて唇を奪われた。
カメラのフラッシュが次々と焚かれる。急にヤル気を出したカメラマンたち。
インタビュアーの握るマイクにも力が入る。
舞桜はテレビカメラにビシッと視線を合わせた。
「というわけで、私がこの学園の生徒会長に就任した天道舞桜だ。これから皆と共により良い学園を創っていくとここに宣言しよう。なお、横にいる夏希は繰下げで副会長とする」
「え〜っ、あたし辞任にしてよ!」
「駄目に決まっているだろう。これは生徒会長と学園長の命令だ」
「ズルイ! こんなときに特権を使うなんてズルイ!」
カメラに次々とポーズを取る舞桜。聞こえない聞こえない、夏希の悲痛な訴えなど聞こえていない。
真ん中に威風堂々と立つ会長天道舞桜と、傍らで肩を落として頭を抱える副会長岸夏希。
爽やか笑顔を常に崩さないイケメン雪弥と、その影から呪いの電波を飛ばす菊乃の書記二人組。
そして、廃人Hにぶっちゅ〜し続けている会計のゴリラ!
こうして今日ここに、第一期舞桜学園生徒会執行部が発足したのだった。
……だ、大丈夫なのか、この生徒会?
その予感は近日中に現実のモノとなるのだった!




