第3話_エクストリーム脱出!(3)
しゃべるだけで爆乳が揺れるベル。
「そんなわけだから、アナタたち明日は休日返上で細菌テロと戦うのよぉん!」
というところで部屋に帰ってきた夏希と雪弥。
最後のベルのセリフだけ聞いてもなんのこっちゃわからない。
たぶん最初から最後まで聞いてもわからないような気がすると思う。
しかし、順応性の高い雪弥はすかさず答えた。
「明日はどうしても外せない用事がありますので、申し訳ありませんが参加できません」
「うむ、用事があるのならば仕方あるまい」
と、すぐに舞桜が承諾。
夏希も変なことに巻き込まれるのが嫌だったので、早めに断ろうと思ったのだが舞桜のほうが早い。
「では仕方ない。私と夏希で任務に当ろう、良いな夏希?」
「ちょ、あたしも用事が……(ないけど)」
だって舞桜にベッタリされてるせいでまだ友達が……。
「夏希のスケジュールはすべて把握している。明日は誰とも約束がない筈だが?」
「一人で買い物ぉ〜(も行かないけど)」
だって買い物行くほど仲のイイ友達いないもんね!
「買い物ならば私が手配して誰かに行かせよう」
「ショッピングって見るのも楽しいんだけど」
「その感覚は私にはわからんな」
「……わかりました、行きます、頑張ります、好きにしてください!」
大丈夫、これまでだってたくさんの困難を乗り越えてきたんだもん。
会議はこれで終わりのようなので、このあとすぐに雪弥が帰宅したの路についた。
夏希は途中の説明を聞いていなかったので居残り。てゆか、まともに説明聞いたのは三人でも途中退席したせいで、舞桜しか聞いていなかったりする。
新しいタバコを口に咥えながらベルはめんどくさそ〜にした。
「じゃ、はじめから説明するわよ」
「お、お願いします(もしかして怒ってるのかな?)」
ちょっと気まずい夏希ちゃん。
「国家の転覆を狙う細菌兵器の名をアナタは知っているかしら?」
「知りませんけど」
「アナタも一度くらい耳にしたことがあるはずよ。その名も――NEETウイルスよぉん!」
「は?(NEETってウイルスとかぜんぜん関係ない気が)」
ごく一般的に言われているNEETの解釈は、親のスネをかじって生きているプーのことだ。漫画家だろうと小説家を目指してようと、それは職業訓練じゃないからプーなのだ!
そのNEETとは違うの?
舞桜は神妙な顔をした。
「夏希、私たちと同じクラスにいるタローくんを知っているか?」
「誰タローくんって?(下の名前とかでだと余計にわからないんだけど)」
「夏希が知らないのも無理がない。なぜなら彼はNEETウイルスに感染して、まだ一度も学校に登校していないのだ!」
「それって単なる登校拒否じゃ?」
もしくはヒッキー。
そして、突然思わぬ事態が三人の身に降りかかるのだった!
――停電。
暗闇で誰かが叫ぶ。
「ついに来たか光の勇者ども!」
あえてノータッチ。
部屋の中には窓がなかったために、電気が消えてしまうと完全にまっくらだ。
「夏希大丈夫か!」
「きゃっ、騒ぎに便乗して抱きつかないで、あっ、そこは[あぁン♪]」
「私は触っていないぞ?」
「えっ……また[あぁン♪]触らないでってば!」
「もっと幼児体型かと思ったけど、なかなかイイ体してるのねぇん♪」
って、お前か触っとんたんは!
暗闇の中での出来事はご想像にお任せします。
部屋に淡いロウソクの火が灯った。
テーブル上に乗った赤いロウソクを中心に、かろうじて部屋の中が見渡せるようになった。
ただこのロウソクって……。
「SM道具をいつも持ち歩いていて助かったわぁん」
ベルの私物だった。
舞桜は腕組みをして思案したあと、深く頷いて見せた。
「これはテロだな。光の勇者がついに我がアトランティス要塞に攻めてきたに違いない」
二度目もスルーしたほうがいいのだろうか?
構わずベルはスルーした。
「プロブレムは停電の範囲だわね。アトランティス全域なのか、それとも学園だけなのか、何より問題なのは補助電源にチェンジしてくれないことだわ(こんなことなら、サボらないでさっさと魔導システムを完成させておけばよかったわぁん)」
もしも停電がしばらく直りそうもないなら、こんな場所でじっとしていても仕方がない。
夏希は席を立った。
「あのぉ〜、あたし家に帰ります」
「ムリ。インポッシブル――不可能よぉん♪」
と明るくベル断言。
なぜかと言うと、今からベルが説明してくれます。
「停電になると学園のドアというドアはロックされちゃうのよね。さらにこの生徒会室は学園の本丸、最後の砦、パニックルーム、とにかくこの中にさえいれば外敵からの攻撃をパーフェクトにディフェンスすることができるわ……停電になっちゃうとアタクシたちも外にも出られないけれどぉ♪」
外からも入れない。
中からも出られない。
……終わった。
でも大丈夫、この生徒会室は万が一の事態を想定して食料が備蓄してある。お菓子だって盛りだくさんだぞ!
ただ問題は明かりがいつまで持つかと言うことだ。
こんな状況だが、不安そうにしているのは夏希だけ。
「夕飯までには帰れるかな?」
「ムリね」
ベル即答。
「日付が変るくらいまでには?」
「さぁ?」
「今晩、ここに泊まりってことないですよね?」
「生徒会室ってシャワー完備じゃなかったかしらぁん? お湯でないけど」
ベルはこんな調子だし、なんだかいつも気の張っている舞桜だが、今はとても安らかな表情をしていた。
「まあ良いではないか、たまにはゆっくりと骨を休めるのも」
「そうそう、今日はパーッと飲んで盛り上がりましょう!」
胸の谷間から取り出された一升瓶。すでに空の瓶が畳の上に転がっている。いったいアンタ何本胸に挟んでるんだよ。
そんなわけではじまったお泊まりパーティ。
時間は楽しく過ぎていき、執拗なまでの[あぁン♪]トークや[自主規制]トークでベルが夏希を責める。
そして、ついに夏希がキレた。
「あたし帰ります!」
どうやら楽しかったのは酔っぱらいのベルだけだったらしい。
夏希はドアをこじ開けようとするがビクともしない。
蹴る蹴る蹴る!
足が痛くなっただけだった。
「だからインポッシブルって言ってるじゃなぁ〜い♪」
「あたし絶対に帰りますから!」
意地になる夏希。
でも開かないドア。
瞑想していた舞桜がすっと立ち上がって刀を抜いた。
「夏希がそこまで出たいというのなら仕方がない。斬るから下がっていてくれ」
一刀が輝線を描いた。
刹那、斜め十文字に入った線からドアが崩れ落ちたのだった。
驚いたのはベルだ。
「絶対斬れないと思ったのに(やっぱり侮れないわね、魔王ちゃん)」
「我が刀に斬れぬ物なし……こんにゃく以外は」
諸事情によりスルーします。
ベルは白衣から筒状の何かを取り出して、夏希に向かって軽く投げた。
「受け取りなさい、懐中電灯よぉん」
ロウソクのほかにもまともなアイテム持ってたのか……。
「あ、ありがとうございます(あの人なんでも持ってるんだなぁ)」
こうしてやっと生徒会室を脱出できたのだが、本当の難問はこのあとに待ち受けていた。
廊下が暗い。
すでに時間も夜だから、外が暗いのは当然だろう。窓から見える景色も月明かり……窓がねぇ!
舞桜は一人で納得。
「事態は思いのほか悪かったらしい」
「どういうこと?」
「停電の拍子に防御システムが誤作動して、窓がすべて塞がれてしまったらしい。もちろん野外に出ることができる扉もすべてだ」
つまり早い話が閉じこめられたって話ですね。
さっきまでと状況変らねぇ!!
「外に出る方法ないの?」
尋ねる夏希に、
「知らん」
即答。
舞桜は言葉を続ける。
「この城の主は私だが、設計したのはベルだ」
「じゃあ鈴鳴先生に聞けばわかるってこと?」
「少なくとも、なんらかの情報は持っているだろう」
そんなわけで部屋に戻った二人。
――ぐぅがぁ〜ッ!
化け物の唸り声かッ!
いや、ベルのいびきだった。
下着丸出しの半裸状態で寝ているベル。どう見ても爆睡。
夏希は畳に膝を付いてベルの体を揺さぶった。爆乳が揺れるのは仕様だ。
「起きてください!」
「……っさい……がぁ〜ぐぅ〜!」
「この酔っぱらい!」
「ぐがぁ〜ッ!」
怪獣のようないびきを掻いて起きる様子なし。揺さぶっても胸が揺れるだけである。
どっと肩を落とした夏希。
「……ダメだ、起きない」
「彼女も疲れているのだ、寝かせてやるが良い」
「でもぉ〜(なにこのダメ教師)」
起きないものは仕方がない。あきらめて夏希は立ち上がった。
舞桜が夏希の手を握った。
「ではゆくぞ夏希!」
「……は〜い」
こうしてついにエクストリーム・脱出が幕を開けたのだった!




