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まおー転生  作者: 秋月瑛
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第3話_エクストリーム脱出!(1)

 生徒会室――と言っても茶の間で開かれる臨時会議。

 ベルは胸の谷間から取り出した一本のタバコを口に咥えた(どこにタバコ入れてんだよ!)。火を点けた動作もしていないのに、煙がいつの間にか出るのはベル仕様だ。

「この部屋灰皿ないのぉん? 灰皿くらい常備しときなさいよ」

 と、言って近くにあった紙コップを自分の元に引き寄せて、それを灰皿代わりにポトンと灰を落とす。

「……それ、あたしの(まだ飲みかけだったのに)」

 小声で夏希がボソッと。聞えていないのかベルは気にも留めない。

 いつもは舞桜が仕切る生徒会だが、今日はどうやら顧問らしいベルペースだ。

「生徒会って何人だったかしらぁん? ワン、トゥ、スリー、フォー……あらぁん、一人足らなくなぁい?」

 すぐに雪弥が説明してくれた。

「ゴリ子さんは家庭の事情とかで野生に帰りましたよ」

 ここは深く追求するべき?

 それともサラッと流すべき?

 夏希は聞かずにはいられなかった。

「家庭の事情って?」

「うん、なんでも地元でいい人が見つかったら結婚するとか。だから生徒会も辞任すると言っていたよ」

 言っていたよって雪弥君、あんたゴリラの言葉がわかるんですか?

 とにかく短い間だったけどお疲れ様でしたゴリ子さん。結婚して幸せになってね!

 そんなわけで話を戻そう。

 ベルは胸の谷間から一升瓶を出して、ラッパ飲みして『ぷはぁ〜』。あんたの胸は四次元ポケットか。

「エブリバディをここに集めたのは他でもないわ。ナウ、ワールドは未曾有のクライシスに直面しているのよぉん!」

 はい?

 話の内容も意味不明だが、そんなことより夏希は常々思っていることがあった。

「会話の中に英語が混ざってわかりづらいんですけど……ワザとですか?」

「ハーフって設定を忠実に演じているだけよぉん」

「設定……本当はハーフじゃないんですか?」

「それは、ヒ・ミ・ツ♪」

 ヒミツってなんだよ、気になるじゃないかっ!

 日本人離れしたベルの顔立ちとナイスバディは外国産の気がするが、どこまでホントでウソなのか、その判断は難しい。だって本人が“設定”発言を今したばかっりだし。

 というか、何人とかそんなこと以前に、生徒の前でタバコは吸うわ酒は飲むわ(しかも一升瓶のラッパ飲み)、教員としてあきらかに不適合者だ。

 だが、すぐ近くにいる学園長こと舞桜はなにも言わない。気にも留めてない感じだ。

 まさか舞桜はベルに弱みを握られているのか!?

 だから強く言えないし、解雇することもできないのかッ!

 きっと[自主規制]とか[自主規制]みたいな弱みを握られ、ネットでバラまかれたくなかったらとか言って、現金まで脅し取られちゃったしているに違いない!(妄想)

「酒なんて飲んでいないで早く話を進めろベル」

 という舞桜の命令口調。

 あれ? 想定(妄想)していた関係じゃないのか?

 今の場面を見ると、主従関係は舞桜のほうが上に見て取れた。

 ベルは酒とタバコをやめることなく、

「うっさいわねぇ〜。酒くらい自由に飲ませなさいよぉ〜」

 この悪態の付き方は、どうやら舞桜のほうが上というわけでもなさそうだ。

 こんなやり取りに業を煮やした菊乃が立ち上がった。

 何も言わず部屋を出て行こうとする菊乃の背中に夏希が声をかける。

「魅神さん、どこ行くの?」

「帰るに決まっているでしょう。飲んだくれのババアに付き合っているほどわたしは暇ではないの」

 これに聞き捨てならないのがもちろんベル。

「ワンスモアプリーズ! アタクシの聞き違いじゃなかったらババアって言ったわよね、このメス豚!」

「豚は貴女のほうでしょう、糞ババア」

 さらなる菊乃の挑発についにベルが爆乳を揺らして立ち上がった。手に持つ一升瓶はどう見ても鈍器です。

「クソって何よ、アタクシが便秘だからってバカにしてんのアナタ?」

 誰も便秘なんて言ってません。

「貴女には糞がお似合いよ。それに年寄りにババアと言って何がいけないのかしら?」

「アタクシのどこがババアだって言うのよ、このナイスバディを見なさぁい!」

「若作りしているだけでしょう。わたし、貴女の本当の姿知っているのよ?」

「えっ!?」

 予想もしていなかった言葉だったのか、なぜかベルが固まった。

 険悪な二人に間に救世主雪弥が割って入った。

「まあまあ二人とも、ケンカはよくないよ。ね、魅神?」

 見つめられた菊乃はすぐに顔を伏せ、こう呟いた。

「……みんな嫌い」

 そして、そのまま部屋を出て行ってしまったのだ。

 部屋にびみょーな空気が漂う。

 ――と思ったのは夏希だけだったようだ。

 目の前で起きたことを見ていなかったように、舞桜は淡々と話を進めようとしていた。

「では、話をしてくれないかベル?」

「そじゃあ、耳の穴をかっぽじってリスニングしなさぁ〜い!」

 すっかりベルもいつもの調子。

 雪弥も何事もなかったような顔をしてベルの話を聞いている。

 この中で夏希は疎外感を抱いていた。

「(なんでみんなこんなに……冷たいんだろう)えっと、ちょっとトイレ行ってくるね。話進めてていいよ」

 夏希は立ち上がって部屋を飛び出した。

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