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灰~後編
名も知らぬ青年に恋をしました。
その恋は実った?
違います。
満開に咲きました。
けれどその花は、誰かに愛でられることなく、朽ちてゆきました。
朽ちたまま姿を留めておくことも許されず。
―…そっと青年が娘の瞼を閉ざせます。
"僕が別れの言葉を言うまで開かないで下さい。"
そうしてそっと口づけを交わし、
"貴女に出会えてとても幸せでした。貴女の幸せを願っています。瞼を開けたら、貴女の記憶から僕は消えています。忘れて下さい…"
サヨウナラ。
ゆっくりと瞼を開ける娘。
"つ、忘れられません。"
涙で歪むその視界に、青年の姿が映る事はありませんでした。