くりゅい
どこか遠くへ行ってしまったおかあさんギツネや、サーカスのラティおばさんから話を聞いていた「雪」は、とっても綺麗なものでした。
ボクは夢中になって、外を走り回ってしまいました。
走っている内に、小さくて綺麗な雪の結晶が、体にしみこむみたいに、毛色が銀になって、とっても体が軽くなりました。
降らせてくれたのは、ネージュと名乗るとっても綺麗な雪の精霊さん。
雪の照り返しの色をした、ひなたちゃんが空中ブランコをする時のようなふわふわした服を着ていて、髪は月光に煌く川面のような冷たい色。
虹彩もしんとした夜のような綺麗な冷えた色。
つんと澄ましたネージュは、ボクよりずっと小さくて、初めて見た雪にそっくりな可愛い女の子でした。
ボクは、とってもとっても綺麗な空から降るお花を見せてくれたお礼がしたくて、ネージュちゃんに何が欲しいか聞きました。
そう、ラティおばさんのお話に出てくるような、恩返しがしたかったのです。
「ボクにできる事は何でも言ってね」
けれど、ネージュちゃんは何にもお願いがないと言いました。
雪を降らせたのも、街の人が慌てるのが楽しかったからだって。
他に遊ぶ事もないし、つまらないから、人間や動物をからかって遊ぶんだって。
だから、ボクは言ったのです。
「じゃあボクがずっとネージュちゃんと一緒にいるよ。ボクと一緒に遊ぼうよ」
ネージュちゃんはびっくりしたみたいでした。
「無理に決まってるわ! 第一アンタ空も飛べないじゃない!」
と大声で言いました。
でもボクは、雪を見てからずっと体が軽くなったみたいだったから、空だって飛べるような気がしてたんだ。