その58 「緊急会議」
本人が一番置いてきぼりな兼
その夜。
ドイツのホテル。
ノアは椅子に座らされていた。
凛の隣。
逃げ場はない。
画面の向こうには、ハミルトン家が揃っていた。
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最上段。
エドワード。
父上。
無言。
無言が一番怖い。
その隣。
ジェシカ。
母上。
微笑んでいる。
微笑みが一番怖い。
別枠。
拓海父さん。
腕を組んでいる。
菜摘母さん。
呆れている。
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そして。
カイル。
アメリカン。
にこやか。
「アメージング!」
場に合っていない。
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沈黙。
誰も最初に言わない。
凛が淡々と口を開いた。
「ノアが爆発しました」
「爆弾じゃないよ!」
「爆弾です」
即訂正。
エドワードが静かに言った。
「ノア」
「はい、父上」
「君は」
一拍。
「黙っていろと言った」
「はい!」
「黙っていたか」
「はい!」
「嘘だな」
即死。
拓海父さんが頭を抱えた。
「だから言っただろ……」
菜摘母さんがため息をつく。
「ルイスを連れ回すなと……」
ジェシカが優しく言った。
「ノア?」
「はい、母上!」
「あなた、ドイツで何を広めたの?」
「兄さんの幸せ!」
「違うわね」
優しい声で刺す。
凛が淡々と報告した。
「佐伯氏の隠し子説が、ドイツで完成しました」
沈黙。
カイルがにこやかに言う。
「アメージング!」
「黙れ」
凛が即座に言った。
カイルが口を閉じた。
殴られてはいないが、殴られた顔だ。
エドワードが目を細める。
「完成?」
「はい」
「どのように?」
凛が一拍置いた。
「ノアが婦人に言いました」
「何を」
凛は淡々と再現する。
「兄にそっくりなんですよ!かわいいでしょう?兄の血が濃いんです!」
沈黙。
拓海父さんが叫んだ。
「血が濃いって何だ!!」
「僕もわからない!」
「黙れ!!」
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ジェシカが静かに手を組んだ。
「ノア」
「はい」
「あなたは伯爵です」
「はい」
「三十七歳です」
「はい」
「なぜ五歳になるの」
「兄さんの事だと!」
「黙りなさい」
「はい!」
返事をするな。
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エドワードが淡々と結論を出した。
「ドイツから帰国したら」
一拍。
「佐伯悠馬の身辺整理を進める」
「父上?」
「生涯独身でオフィスで死なせる気はない」
確定事項だった。
拓海父さんが頷く。
「有能嫁だな」
「有能嫁ね」
ジェシカも頷く。
嫌な共鳴音。
ノアが顔を上げた。
「じゃあ僕は正しいことを!」
「違う」
凛が即答した。
「あなたは黙っていなさい」
「はい!」
カイルが小さく手を挙げた。
「アメージング……?」
「黙れ」
「イエス」
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こうして会議は終わった。
爆弾は封印された。
(されていない)
噂は育った。
悠馬は遅い。
世界は早い。
胃だけが正直だった。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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