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佐伯悠馬の結婚事情(仮)  作者: 雪森蓮


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その58 「見守るだけ(見守らない)」

ノアは悠馬君が絡むとIQが下がります

翌朝。


凛の監視は完璧だった。

完璧すぎた。


ノアは椅子に座り、紅茶を飲み、


息だけしていた。

しているように”見えた”。


ーーーーーーーーーーーーーーー


外では伯爵だった。


背筋。

所作。

礼儀。

誰が見ても完璧なハミルトン伯爵。


問題は。

兄が絡まない時に限る。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「ノア」


凛が言う。


「今日は観光しなさい」


「はい」


「見守るだけ」


「はい」


「動いたら殺す」


「はい」


返事が良すぎる。


凛は目を細めた。


「……返事が良すぎるのが怖いわね」


「そんなことないよ」


「ある」


ーーーーーーーーーーーーーー


凛が部屋を出た。


扉が閉まる。

静寂。

爆弾解除。


……のはずだった。


ノアは一拍置いた。


そして。


真顔になった。

伯爵の顔だ。


(凛は正しい)


(余計なことをするな)


(兄さんを困らせるな)


理性が言う。

完璧だ。

三十七歳の思考だ。


次の瞬間。

ノアの目がきらきらした。


(でも)


(兄さんは所用で胃を痛めていた)


(放置したら独身でオフィスで死ぬ)


(確定事項)


感情が言う。

弟が言う。

爆弾が言う。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「よし」


ノアは立ち上がった。

息だけとは何だったのか。


ルイスが顔を上げる。


「父上」


「なに?」


「抜け出しますね」


「抜け出さないよ」


「嘘です」


「嘘じゃないよ!」


ルイスは淡々と続けた。


「父上は昨日も嘘をつきました」


「言うな!」


言うな。

爆弾は爆弾だ。


ノアは屈んでルイスの目線に合わせた。


「ルイス」


「はい」


「見守るだけだ」


「はい」


「だから」


一拍。


「兄さんを見守りに行く」


「……はい」


論理が崩壊している。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


ノアは帽子を被った。

サングラスまでかけた。


変装のつもりらしい。


ルイスが真顔で言う。


「父上、目立ちます」


「大丈夫!」


「大丈夫ではありません」


ーーーーーーーーーーーーーー


廊下。


爆弾は静かに転がり出た。

”伯爵”は消えた。

”弟”が出た。

「兄さん幸せ計画」が動き出した。


『誰も頼んでいないのに』



ここまで読んでくださってありがとうございます!


『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。

結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。

相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。


更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので

よかったらまた覗いてください。


感想・フォロー等とても励みになります!

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