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佐伯悠馬の結婚事情(仮)  作者: 雪森蓮


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その57 「回収後」

凛はノアの奥さんの双子の姉(悠馬君の妹)です。弟みたいなもんなので勝てません。

ホテルの一室。

ノアは椅子に座らされていた。


背筋が伸びている。

伸びすぎている。


凛が正面に立っている。


静かだ。

静かすぎて怖い。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「ノア?」


「はい!」


「あなたは何をしに来たの」


「兄さんを幸せに!」


「違う」


即答だった。


凛の声は優しい。

優しいが、冷たい。


「あなたは休暇で来た」


「はい!」


「仕事ではない」


「はい!」


「つまり」


一拍。


「黙って観光していればよかった」


「はい!」


全部はい。

”理解しているか”は別だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 凛は淡々と続けた。


「なぜ爆弾を持ち歩くの」


「爆弾じゃないよ!」


「爆弾よ」


「はい!」


認めるな。


ーーーーーーーーーーーーーーー


ノアは必死に言い訳を探した。


「だって兄さんが!」


「兄さんが何」


「兄さんが……所用で胃を痛めてたから!」


「所用で胃を痛めるのは通常運転でしょう?」


「そうなんだけど!」


凛が目を細める。


「余計なことを言ったわね」


「はい!」


「息だけしていなさい」


「はい!」


「できていない」


「はい!」


会話が成立しない。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


扉の向こう。

悠馬が壁に寄りかかっていた。


胃薬を握っている。


(助けてほしい)


(でも助けたら爆発する)


悠馬は静かに撤退した。


仕事の顔でしか生きられない男は、

家庭の修羅場には立ち入れない。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


凛は最後に言った。


「ノア」


「はい!」


「明日からは」


一拍。


「観光しなさい」


「はい!」


「兄さんを見守るだけ」


「はい!」


「動いたら殺す」


「はい!」


元気よく返事をするな。


ーーーーーーーーーーーーーーー


こうして爆弾は封印された。


”封印されたはず”だった。


ノアの目はきらきらしている。


(見守るだけ)


(つまり近くにいる)


(兄さん幸せ計画、継続!)


解除はされていなかった。



ここまで読んでくださってありがとうございます!


『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。

結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。

相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。


更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので

よかったらまた覗いてください。


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