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佐伯悠馬の結婚事情(仮)  作者: 雪森蓮


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その55 「所用」

ロッテちゃんはファザコンです

同じ頃。

別のレストラン。


レオンとシャーロッテは先に席についていた。

ロッテは落ち着かない様子でグラスを触っている。


「ママ、遅い」


「仕事だろう」


レオンが穏やかに言う。


「わかってる」


わかっているが。

ロッテは少しだけ口を尖らせた。


せっかく。

こうして”三人で食事”ができるのに。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


やがて、エレノアが現れた。


整った足取り。

整った表情。

仕事の顔のまま。


「遅れてごめんなさい」


「ママ!」


ロッテの声が弾んだ。


隠せない。

隠す気もない。


エレノアは席につき、ナプキンを膝に置く。


「……久しぶりね、ロッテ」


「久しぶりじゃない、ママが忙しいだけ!」


「そうね」


淡々と認める。

それがエレノアだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


ロッテが頬を膨らませたまま言った。


「ねえ。さっきも言ってたでしょ?」


「何を?」


「所用があるって」


エレノアは一拍置く。


「ああ」


業務用の言葉だった。


「所用って、これ?」


「ええ」


ロッテの顔がぱっと明るくなる。


「じゃあ家族の食事じゃない!」


「そうよ」


「それなら嬉しい!」


レオンが小さく笑った。


「ロッテは単純だな」


「単純でいいの!」


ロッテは胸を張る。

ママの隣はパパであるべきだ。


”当然”だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


料理が運ばれてくる。


ロッテは機嫌よくフォークを動かしていた。

エレノアはふと、娘を見て言った。


「ロッテ」


「なに、ママ」


「試験はもうすぐでしょう」


「アビトゥーアね」


「ええ」


淡々と確認する。

母親の声だ。

仕事の声ではない。


「その後は、進学をどうするの?」


ロッテの動きが一瞬止まった。

レオンが穏やかに口を挟む。


「うちで一旦インターンでもいい」


「パパの会社で?」


「そうだ。現場を見てから決めてもいい」


ドイツらしい現実的な提案だった。

ロッテは肩をすくめる。


「それも選択肢だけど……」


「だけど?」


エレノアが促す。


ロッテは少しだけ視線を落とした。

そして。

顔を上げる。


「……イギリスに行きたい」


レオンが瞬きをする。

エレノアも一拍置いた。


「前から言っていたわね」


「うん。でも」


ロッテはフォークを置く。


「折角留学するなら、いいとこ狙いたい」


「いいとこ?」


「オックスフォードとか」


さらりと言う。


「ケンブリッジとか」


レオンが小さく笑った。


「欲張りだな」


「欲張っていいでしょ。人生だもの」


ロッテは胸を張る。


ーーーーーーーーーーーーーーー


エレノアが淡々と告げた。


「今の私のボスは、オックスフォードね」


ロッテの眉がぴくりと動いた。


「あの……佐伯さん?」


「そう」


「……へえ」


ロッテは目を細めた。


「そういえば、そんな話してたね」


エレノアが視線を上げる。


「何を?」


「噂」


ロッテは軽く肩をすくめる。


「嘘じゃないの?」


一拍。

レオンが穏やかに言った。


「経歴は本物だ」


「ふうん」


ロッテは頬杖をつく。


噂は噂。

でも。


”オックスフォード”

”ママのボス”

”変なウサギ”


情報が繋がってしまう。

ロッテはにこにこしたまま思った。


(ウサギのくせに?)


(……面白いじゃない)


ーーーーーーーーーーーーーーー


ロッテはグラスを傾けた。

そして軽く鼻を鳴らす。


「どうせ、まぐれよ」


エレノアが眉を上げる。


「何が?」


「オックスフォード」


ロッテはさらりと言った。


「あんな人が?」


レオンが咳払いをした。


「ロッテ」


「だって!」


ロッテは頬を膨らませる。


「ママの隣にいるのに、ふにゃふにゃしてて」


「仕事はできるわ」


「仕事だけでしょ」


ロッテは笑顔を作った。

その笑顔が一番怖い。


「私が乗り込んで」


一拍。


「化けの皮、剥がしてやる」


エレノアが静かに言った。


「やめなさい」


「やだ」


ロッテは即答だった。

ママの隣はパパ。


”ウサギは論外”


論外のはずなのに。

ママは何かを見ている気がする。


だから。


(処す)


火種は、決意になった。



ここまで読んでくださってありがとうございます!


『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。

結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。

相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。


更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので

よかったらまた覗いてください。


感想・フォロー等とても励みになります!

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