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佐伯悠馬の結婚事情(仮)  作者: 雪森蓮


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その52 「息だけ」

カイルも結構好き。凛とカイルの話書こうかな

翌朝。


ドイツの空は澄んでいた。

ホテルの廊下も静かだ。


静かすぎる。


昨日のZoom会議が嘘みたいである。


嘘ではない。

殴られた頬がまだ痛い。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


ノアは部屋のベッドに転がっていた。


命令は一つ。


「息だけしていなさい」


凛の声が脳内で響く。

拳も一緒に響く。


ノアは天井を見つめた。


(息だけ……)


吸う。

吐く。


(退屈だな)


吸う。

吐く。


(兄さんは昨日、元夫とランチで胃が死んでる)


吸う。

吐く。


(俺は息だけ)


吸う。

吐く。


(無理だろ)


結論が早い。


ーーーーーーーーーーーーーーー


ノアは起き上がった。


静かに。

忍び足で。


爆弾が忍び足という時点で終わっている。


ドアに手をかけた瞬間。


「お祖父様に言われたこと、覚えてる?」


背後から声。


ルイスだった。


小さい。

静か。


そして目が澄んでいる。


爆弾の子供は爆弾である。


「……ルイス」


ノアは笑顔を作る。


「おはよう」


「おはようございます」


礼儀が完璧だ。

余計怖い。


「今日は息だけの日です」


ルイスが淡々と言った。


「……そうだね」


「父上は息以外をすると殴られます」


「正確だね」


ルイスは頷く。


「頬、大丈夫ですか」


「大丈夫!」


大丈夫ではない。


ーーーーーーーーーーーーー


ノアは咳払いした。


「ルイス」


「はい」


「散歩しない?」


「息だけの日です」


「散歩は息の延長だよ」


「違います」


即答だった。

賢い。


ノアは困った。

困ったが。


爆弾は止まらない。


「兄さんを幸せにする計画があるんだ」


ルイスの目が少し光る。


「叔父上を?」


「そう、叔父上――じゃなくて兄さん」


ノアはすぐ言い直す。


「僕の兄さん」


ルイスは真顔で頷いた。


「父上の兄さんは、私の叔父上です」


「そういうこと!」


整理が正しい。


「それは重要です」


重要判定が甘い。

ノアは勢いづいた。


「だから少しだけ」


「少しだけなら息ですか」


「息だね!」


「わかりました」


わかっていない。


ーーーーーーーーーーー


こうして。

爆弾は二つになった。


廊下。

ノアは忍び足。

ルイスも忍び足。


親子で忍び足。


終わっている。


エレベーター前。


ノアがボタンを押そうとした瞬間。


「よっ、ノア!」


背後。

でかい声。


カイルだった。


眩しい笑顔。


「元気に爆発してる?」


「してない!」


ノアが即答。

ルイスも即答。


「おはようございます!」


カイルが屈んで手を振る。


「ルイスも一緒か」


ルイスは真顔で答えた。


「父上が動くので付いてきました」


「えらい」


「えらくない!」


ノアが叫ぶ。

カイルは肩をすくめる。


「息だけの日じゃなかったっけ?」


ノアは固まった。


「……息です」


「移動する息?」


「移動する息です!」


カイルが親指を立てる。


「Amazing」


「褒めるな!」


カイルは笑顔のまま言った。


「凛に言う?」


ノアの魂が抜けた。


「やめて!!」


「じゃあ戻る?」


「……戻りません」


「戻れ」


「戻りません!」


爆弾である。


カイルはため息をついた。


「しょうがないな」


一拍。


「俺も付いてく」


「最悪!!」


「安心だろ?」


「安心じゃない!!」


こうして。

爆弾は三つになった。


誰も頼んでいない。

噂だけが育つ。


兄さんの胃だけが死ぬ。

ドイツの朝は平和だった。


『表向きは』



ここまで読んでくださってありがとうございます!


『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。

結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。

相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。


更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので

よかったらまた覗いてください。


感想・フォロー等とても励みになります!

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