その51 「詰問」
79話アップしてまだ恋愛が始まってない(いつもの)
同日。
ホテル。
ノアは連れ戻されていた。
正確には。
回収されていた。
カイルに襟を掴まれ、廊下を運ばれ、部屋に投下された。
爆弾である。
「自由時間だったのに!」
ノアが叫ぶ。
凛は椅子に座ったまま、微笑んでいた。
微笑みは優しい。
優しいが、冷たい。
「ノア」
「はい!」
反射で背筋が伸びる。
慣れすぎている。
「君は今日、何をした?」
「散歩!」
「散歩で噂を完成させないで」
「完成させてないよ!」
即答だった。
凛はスマホを机に置く。
画面にはメッセージ。
英国から。
『ドイツで面白い話が出ております』
最悪である。
「ノア」
凛の声が柔らかい。
「説明して」
「僕、褒めただけ!」
「褒めて爆発するな」
「爆弾扱いひどい!」
「爆弾です」
凛が淡々と頷く。
ノアは机に突っ伏した。
「兄さんを幸せにしたいだけなのに……」
「その言葉が一番怖い」
「なんで!?」
「余計なことしかしないから」
正論だった。
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凛は指を組む。
「ルイスを連れ回さないでと言った」
「連れ回してない!」
「連れ回した」
背後からカイルの声。
「した」
「カイルまで!」
「事実です」
凛が淡々と続ける。
「君は“息子です”と紹介した」
「それは正しい!」
「正しい」
凛は頷く。
「正しいのに、噂が増えた」
「世界が悪いよ!」
「世界は暇なの」
凛の結論は冷酷だった。
「社交界は暇で、整合性を求める」
「数学みたいに言うな!」
「数学より厄介」
凛は微笑む。
「国境を越える」
ノアが青ざめる。
「……もうロンドンに?」
「もうロンドンに」
「早すぎない!?」
「奥様ネットワークは光速」
ノアは頭を抱えた。
「兄さんにバレたら死ぬ!」
「悠馬は気づかない」
「そこがまた怖い!」
凛は一拍置く。
「だから君が黙れ」
「はい!」
即答。
(即答するな)
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凛は立ち上がった。
「ノア」
「はい!」
「君は今日から」
一拍。
「息だけしていなさい」
「ひどい!」
「爆弾は呼吸だけでいい」
「爆弾じゃない!」
「爆弾です」
カイルが頷く。
ノアは机に突っ伏した。
「僕、兄さんのために……」
「兄さんのためなら動くな」
凛の声は優しい。
優しいが、絶対だった。
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その時。
ノアのスマホが震えた。
通知。
『母:ドイツの噂、聞いたわよ』
ノアの魂が抜けた。
凛が覗き込む。
「……誰?」
「母」
「ジェシカ?」
「はい」
凛は静かに微笑んだ。
「ノア」
「はい!」
「終わったわね」
「終わったぁぁぁぁ!!」
ホテルの廊下に悲鳴が響いた。
『爆弾は解除されていなかった』
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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