その42 「ロッテの決意」
ロッテちゃんにロックオンされる悠馬君
ロッテは思う。
この男。
ウサギのように害のない顔をして。
怯えたふりをして。
胃が痛いふりをして。
『母に入り込もうとしている。』
(絶対そうだ)
母に不義の息子「ルイス」を押し付けるために狙っている。
そんな事実はない。
ないのに。
ロッテの中では確定していた。
火山の煙は偶然ではない。
必ず火種がある。
そして火種はこのウサギだ。
(ママはきっと)
(今までになかったタイプだから)
(興味を持っているだけに違いない)
大体合っている。
それが余計に厄介だった。
母は踏み込まない。
母は仕事しかしない。
母は大人だ。
だからこそ。
少しの“興味”が危険なのだ。
目を覚ましてもらわなければ。
”絶対に。”
母の人生を変な方向に燃やさせるわけにはいかない。
(そうだ)
(パパに相談しよう)
父なら正しく判断できる。
父ならこのウサギの正体を見抜ける。
父なら母にふさわしい相手かどうか分かる。
いや。
分からせる。
(今日の夜にでも必ず)
ロッテは決めた。
静かに。
確固として。
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ガーデンパーティは、
爆弾キッズとルイスのおかげで惨憺たる有様になっていた。
「ヤード最高!」
「ガーデンです!!」
「お菓子!!」
「走らないで!!」
芝は踏まれ、
花は揺れ、
大人たちの笑顔は引きつっている。
レオンは終始ライオンのまま紅茶を飲み、
ノアは爽やかに謝り続け、
悠馬は胃を押さえ続けた。
地獄である。
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帰り際。
エレノアが静かに近づいてきた。
いつも通り整った声。
「佐伯さん」
悠馬がびくりとする。
「……はい」
エレノアはほんの少しだけ目を細めた。
「娘が失礼をしてごめんなさいね」
悠馬は固まった。
(やっぱり)
(絶対変な誤解されてる)
胃がきゅっと縮む。
だが。
どう説明すればいいのか分からない。
説明すればするほど墓穴を掘る未来しか見えない。
悠馬は結局、最も無難な言葉を選んだ。
「……いえ。仕事ですから」
仕事じゃない。
今日も仕事じゃない。
でもそれしか言えない。
エレノアは小さく笑った。
「ええ」
一拍。
「仕事、ですね」
その声は優しいのに、
どこか楽しそうで。
悠馬はますます複雑な心境になった。
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ロッテはその背中を見ている。
母の声。
ウサギの顔。
母の目の揺らぎ。
(やっぱり)
(危険だ)
ロッテは確信した。
今日の夜、必ず父に相談する。
ウサギを排除するために。
母を守るために。
『絶対に』
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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