その39 「シャルロッテの審査(後)」
ロッテちゃん悠馬君をウサギ認定
私は母を見る。
母――エレノアはいつも通り静かで、
完璧に整っている。
誰にも踏み込ませない顔。
ハンターの顔。
……のはずだった。
なのに。
佐伯悠馬を見るときだけ、
ほんの少し。
本当にほんの少しだけ、
目が楽しそうに踊った。
錯覚かと思った。
思いたかった。
(えっ)
(マジ?)
母が?
このウサギを?
私はもう一度男を見る。
こちらの視線に気づいたのか、
男はびくりと肩を揺らした。
落ち着かない。
逃げ腰。
萎える。
(ママ、好み変わった?)
父の隣に立っていた人が?
このウサギ?
私は微笑みを崩さないまま、
一歩近づいた。
話しかけようとした。
審査を始めるために。
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その瞬間だった。
「おじさん!!」
小さな影が横から飛び出した。
勢いよく。
迷いなく。
男に突撃する。
佐伯悠馬が反射で受け止める。
慣れている動き。
抱きとめた腕の中で、
男の子がにこにこ笑った。
「悠馬おじさん!」
私は固まった。
子供。
小さな男の子。
……顔。
顔が。
(そっくりじゃない?)
ウサギ男に。
瓜二つ。
角度まで同じ。
目の形も。
表情も。
縮小版。
私はゆっくり瞬きをした。
(ああ)
(そういうこと?)
納得が早すぎる。
勝手に繋がる。
母が言っていた噂。
ハミルトンの煙。
火のない所に煙は立たない。
煙どころか火山。
(……隠し子?)
(後継者?)
(仕事って、そういう仕事?)
何が仕事だ。
私的すぎる。
私は母を見る。
母は平然としている。
平然としすぎている。
それが余計に怪しい。
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男の子が言った。
「ロッテさん、こんにちは!」
英語は綺麗だった。
少しだけ硬い。
育ちの良さが滲む。
父も母も英語は当然。
この家では言葉は問題にならない。
問題は別だ。
顔だ。
顔。
顔が一致している。
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佐伯悠馬が小声で言った。
「……ルイス、今は」
「父上がいないから大丈夫!」
父上。
父上?
私は眉を動かした。
(父上?)
(このウサギが父じゃないの?)
(じゃあ誰?)
混乱が一瞬遅れてくる。
なのに結論だけは勝手に出る。
(面倒な事情がある)
(絶対ある)
(ママ、巻き込まれてる)
いや。
巻き込まれてる顔じゃない。
むしろ少し楽しそうだった。
最悪だ。
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私は微笑んだ。
完璧な社交の笑みで。
そして決めた。
このウサギは危険だ。
父の隣に立てないどころか、
母の人生を燃やす火種だ。
絶対に認めない。
ドイツ滞在中、絶対に。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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