幕間 サプライズの準備
すいません!ぬかしてたのでさしこみますうう
悠馬がドイツへ飛ばされた。
叔父上の即決で。
胃を置き去りにして。
エレノア同伴で。
十日間。
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その報告を聞いた夜。
ハミルトン邸の空気は微妙に重かった。
重いのは胃ではない。
不穏である。
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ノアがにこにこして言った。
「兄さん、ドイツなんだってね」
その笑顔が既に信用ならない。
凛が即座に目を細めた。
「……で?」
ノアは首を傾げる。
「で?」
その“で”が怖い。
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ノアは続けた。
「夏休みだしさ」
一拍。
「子供たちも飽きてきてるんだよね」
ルイスが頷く。
「ここ、うるさい」
凛の子供たちが走り回っている。
芝生が死んでいる。
夏だ。
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ノアが手を叩いた。
「だから旅行に行こうと思うんだ!」
沈黙。
一瞬。
全員の脳裏に同じ言葉が浮かぶ。
(やる)
(こいつ、やる)
(絶対、何かやる)
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拓海が低い声で言った。
「……どこに」
ノアは満面の笑み。
「サプライズの方がいいよね?(^_−)−☆」
「よくない」
凛が即答した。
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凛が追撃する。
「行き先は?」
ノアは胸を張る。
「大陸方面ダヨ!」
広い。
広すぎる。
それは答えではない。
沈黙。
全員が思う。
(大陸方面……?)
(まさか……)
(いや……)
(流石に……)
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菜摘が静かに言った。
「ノア」
一拍。
「動くなって言いましたよね?」
「うん!」
返事だけは良い。
いつも通りだ。
信用はゼロだ。
ジェシカが微笑んだ。
「子供たちもいるのだし」
一拍。
「大丈夫よね?」
希望的観測である。
拓海がぼそっと呟く。
「大丈夫じゃない気しかしない」
凛が腕を組んだ。
「……まさかね」
言いながら目が冷たい。
自分に言い聞かせている。
エドワード叔父上は紅茶を飲みながら言った。
「釘は刺した」
刺した。
確かに刺した。
だがノアは火薬工場だ。
釘くらいでは止まらない。
止まらないが――
流石に。
流石に本人の目の前までは。
流石に。
その夜。
ノアは自室で嬉々としてパソコンを開いた。
チケットサイト。
人数入力。
大人一名。
子供五名。
「人数多いしね!」
楽しそうである。
最悪である。
行き先。
ドイツ。
そして。
宿泊先。
悠馬の滞在ホテル。
同じ。
スイートの隣。
完璧な包囲。
ノアは満足そうに頷いた。
「サプライズって大事だよね」
火薬工場にガソリンを撒きながら。
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ハミルトン邸の誰も、
その予約完了メールを知らない。
知っていたら止めた。
止められたかは知らない。
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翌朝。
悠馬はまだ知らない。
自分の胃に、
追加の爆弾が搭載されたことを。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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