その32 「召集(中編・管理案)」
毎回大体ノアのせい←
噂は消せない。
だから管理する。
そこまでは全員一致だった。
問題は――何をどう管理するか、である。
菜摘が静かに口を開いた。
「噂の核はルイスです」
一拍。
「毎日職場にいる」
拓海が頷く。
「そりゃ隠し子になる」
ノアが反射で何か言いかけて止まった。
偉い。
息だけしている。
ジェシカが穏やかに言う。
「でも、ノアがしたこと自体は」
一拍。
「悪いことではないのよね」
凛が眉を動かす。
「……福利厚生」
菜摘が頷いた。
「子供を置けるスペースを作った」
拓海が肩をすくめる。
「現場仕事の親には助かる」
カイルが嬉しそうに言った。
「Amazing!ファミリーフレンドリー!」
凛の視線。
「黙れ」
「……Yes」
ノアが小さく言った。
「ルイスが、家だと落ち着かなくて」
蘭が画面越しに即答する。
『あなたのせいでしょ』
「……すみません」
正しい。
菜摘が現実を整理する。
「ルイスは兄弟がいない」
「従兄弟は距離が近い」
「庭は戦場」
拓海が頷く。
「逃げ場が職場しかない」
凛が冷たく言う。
「可哀想ね」
言葉は冷たいが、結論は優しい。
エドワードが紅茶を飲んだ。
「ならば」
一拍。
「ルイスの環境を整えろ」
全員が顔を上げた。
ジェシカが続ける。
「家で落ち着ける場所」
「子供部屋」
「居場所」
一拍。
「職場だけが逃げ場にならないように」
菜摘が頷いた。
「それが第一」
拓海がノアを見る。
「毎日連れて行くな」
凛が補足する。
「週一でも噂は燃えるのに」
蘭が刺す。
『毎日は火山』
ノアが小さく言った。
「……はい」
分かってない顔だった。
エドワードが淡々と言う。
「連れて行くなら」
一拍。
「“甥”として固定しろ」
拓海が納得する。
「曖昧だから燃える」
凛が頷く。
「公式設定を上書きする」
菜摘が付け足す。
「悠馬に説明させない形で」
全員が頷いた。
胃が死ぬからだ。
そして。
ジェシカが静かに本丸を置いた。
「もう一つ」
一拍。
「エレノア嬢を噂から遠ざけましょう」
空気が変わる。
ここが最重要だった。
拓海がぼそっと言う。
「距離取られてるんだろ」
凛が冷たく頷く。
「火山の煙を見てる」
菜摘が現実を言う。
「踏み込まない人ほど、引く時は早い」
ノアが震えた。
兄さんが終わる。
エドワードが紅茶を置いた。
「丁度いい案件がある」
一拍。
「ドイツだ」
拓海が眉を上げる。
「例の取引先か」
「そうだ」
エドワードは即答した。
「先方のボスから直接話が来ている」
ジェシカが微笑む。
「悠馬も知っている案件ね」
菜摘が頷く。
「避けられません」
凛が冷たく言う。
「代表として行かせるのが筋」
拓海が肩をすくめた。
「仕事なら断れないな」
エドワードが静かに結論を置く。
「悠馬を出す」
一拍。
「エレノア嬢も同行だ」
ジェシカが穏やかに補足する。
「秘書として当然の配置です」
言い換えが怖い。
凛が腕を組む。
「噂から距離を取らせる」
「二人きりの時間を作る」
一拍。
「悠馬に自覚させる」
恐ろしいほど合理的だった。
蘭が淡々と呟いた。
『包囲網ね』
ジェシカが微笑む。
「家族の支援です」
言い換えが怖い。
こうして方針は決まった。
第一。
ルイスの居場所を整える。
第二。
職場常駐をやめさせる。
第三。
エレノアを火山から退避させる。
第四。
ドイツ出張で胃を追い詰める。
そして。
ノアだけが思っていた。
(兄さんに相談しよう)
全員が「息だけしろ」と言ったのに。
薬工場にガソリンを撒く男は止まらない。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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