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その23 「誤解」

皆に無碍にされるニア君。まぁねぇ、、今までがアレだしねぇ

翌朝。


オフィスはいつも通りだった。


書類が積もり、

予定が詰まり、


胃が痛い。


佐伯悠馬の日常である。


そこに。


余計なものが混ざっただけだ。


昨日のお茶会。


ルイス。

エレノア。


そして――妙な空気。


「……佐伯さん」


エレノアが淡々と書類を置いた。


「本日の予定です」


「ありがとう」


声が少し硬い。


自覚はある。

直せない。

彼女は変わらない。


仕事の顔。

距離の顔。


整える人の顔。


ーーーーーーーーーーーーー


昨日のことを話題にすべきか。


すべきではないのか。

悠馬は一瞬迷った。


迷っている時点で終わっている。

普通なら笑って済ませるのだろう。


普通ではない。


「……昨日は」


口が勝手に開いた。


「お疲れさまでした」


「ええ」


エレノアは頷く。


「賑やかでしたね」


「賑やかというか災害でしたね」


「ふふ」


軽い笑い。

余裕。

踏み込まない笑い。


悠馬の胃がきゅっと縮む。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


沈黙。


そして。

エレノアがさらりと言った。


「……佐伯さん」


「はい」


「世の中には、事情というものがありますものね」


一拍。


悠馬の脳が止まった。


「……え?」


事情。


何の。

事情。


「ルイスくん」


エレノアは言葉を選ぶように続けた。


「とても懐いていました」


「……甥です」


即答だった。


速すぎた。

必死すぎた。

墓穴の匂いがした。


「ええ」


エレノアは穏やかに微笑む。


「分かっています」


分かっている、の意味が怖い。


「いえ、あの、本当に」


悠馬は焦った。


「蘭は妹で、ノアは義理の弟で、だから血縁は大有りで」


「ええ」


「隠し子とかではなく」


「ええ」


「そもそも僕は」


一拍。


「そういうことができる人間ではなく」


言った瞬間、終わった。


エレノアの眉がほんの少しだけ動いた。


あ、と思う。


遅い。


「……佐伯さん」


エレノアの声は優しかった。

優しいほど遠い。


「立場があれば、色々あります」


「ないです」


「あります」


「ありません」


悠馬は必死だった。

必死になるほど怪しい。


エレノアはふっと息を吐いた。


「私も以前の結婚で子供がおりますから」


一拍。


「ご事情は理解いたします」


理解しなくていい。

理解しないでほしい。


悠馬は固まった。


胃薬が恋しい。


ーーーーーーーーーーーーーー

その日の午後。


噂は当然、耳に入った。


でも


燃え方が違っていた。


ーーーーーーーーーーーーーー


「聞いた?」


「佐伯さんのところ」


「ついに“整った”らしいよ」


「え?」


「秘書のエレノアさん」


「あの落ち着いた人?」


「昨日ハミルトン邸に同伴してたって」


「もう公認じゃん」


「そりゃそうでしょ、あの家だよ?」


声が軽い。


祝福めいた温度。


最悪だ。


「佐伯さん、絶対一生独身だと思ってた」


「分かる」


「でもほら、生活破綻してるし」


「支える人が必要ってやつ」


「有能嫁…」


その単語が出た瞬間。


悠馬の胃がきゅっと縮んだ。


やめてくれ。


それは叔父上の単語だ。


社内用語にするな。


悠馬が廊下を通る。


視線が刺さる。

同情ではない。

納得でもない。

期待だ。


勝手な期待。


エレノアは淡々と仕事をしている。


何も変わらない。

変わらないのに。


周りだけが勝手に“決まった顔”をしている。


悠馬は胃薬を探した。


夜。


ハミルトン邸。


会議が開かれた。

当然だ。

終わるわけがない。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「誤解が進んでいる」


拓海が言った。


「隠し子じゃない」


凛が刺す。


「有能嫁内定のほうよ」


菜摘が真顔で補足する。


「胃が死にます」


全員が頷いた。


悲しい。


「兄さんが墓穴を掘った」


ノアが言う。


「黙れ」


全員が即答した。


ノアがしょんぼりした。


エドワードが紅茶を置く。


一拍。


「作戦を練り直す」


有能嫁最終フェーズは続く。


本人の胃を置き去りにして。



ここまで読んでくださってありがとうございます!


『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。

結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。

相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。


更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので

よかったらまた覗いてください。


感想・フォロー等とても励みになります!

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