その20 「作戦会議ふたたび(続き)/有能嫁最終フェーズ」
家族全員からいいように言われるゆうまくん
会議は終わらない。
終わるわけがない。
有能嫁最終フェーズ。
もはや国家プロジェクトである。
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エドワードが紅茶を一口飲んだ。
そして、静かに言った。
「ところで」
一拍。
「肝心のエレノア嬢のほうはどうなのだ」
空気が変わった。
ジェシカが微笑む。
「ええ、大事ですね」
拓海が肩をすくめた。
「百戦錬磨なんだろ?無理じゃね?」
凛が即座に頷く。
「悠馬が勝てるわけないわ」
菜摘も真顔で補足する。
「勝つ前に胃が死にます」
全員が納得した。
悲しい。
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ジェシカが穏やかに言う。
「あら、案外そういう人こそ」
一拍。
「新鮮な驚きをくれる人が良いものよ?」
そして。
ちらり。
エドワードを見る。
エドワードは紅茶を飲んだ。
無言で。
だが。
口元がわずかに上がっている。
拓海がぼそっと呟いた。
「今さら惚気るなよ」
「惚気ていない」
「惚気てる」
ジェシカは微笑んだ。
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ノアが手を挙げた。
「たぶん……」
嫌な予感しかしない。
「エレノア嬢、ルイスを誤解してると思う」
一拍。
全員の視線がノアに刺さる。
蘭がゆっくり首を傾げた。
「誰のせい?」
ジロッ。
ノアは反射で床に額をつけた。
「大変申し訳ございませんでしたっ!!」
慣れすぎている。
ルイスが菓子を食べながら呟く。
「父上、またやってる」
「やってない」
「やってる」
子供は正しい。
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カイルが拳を握った。
「ならば!」
凛の目が冷える。
氷点下。
「夜会に同伴して休憩室に――」
「黙れ!!」
バキッ。
凛の拳が机に落ちた。
音がした。
カイルが即座に沈黙する。
「……すみません」
「分かればいい」
凛は冷たい。
家庭内治安維持装置。
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拓海がため息をついた。
「結局さ」
一拍。
「エレノアは逃げる気があるのか?」
ジェシカが首を振る。
「逃げるというより」
一拍。
「踏み込まないのよ」
菜摘が頷く。
「大人ですね」
凛が冷たく言う。
「経験値が違うのよ」
エドワードが静かにまとめた。
「だからこそ」
一拍。
「逃がすな」
全員が頷いた。
恐ろしい一致団結。
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ノアが小さく言う。
「兄さんは鈍いです」
「鈍いわね」
凛が即答。
「鈍いな」
拓海も即答。
「鈍いです」
菜摘も即答。
ジェシカだけが優しく微笑んだ。
「鈍いのではなく」
一拍。
「怖いのよ」
空気が少しだけ静かになった。
ノアが珍しく黙った。
ルイスがぽつり。
「悠馬おじさん、いつも胃が痛い」
全員が頷いた。
悲しい。
エドワードが紅茶を置く。
「最終フェーズだ」
一拍。
「環境を整えろ」
「包囲網ね」
凛が口角を上げる。
「言い方」
ジェシカが笑う。
「家族の集まりです」
拓海が肩をすくめた。
「胃薬も忘れるな」
菜摘が握りしめた。
「はい」
ノアがにこにこする。
「兄さんにはサプライズで」
全員。
「やるな」
ノアがしょんぼりした。
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こうして。
有能嫁最終フェーズは続く。
”本人の胃を置き去りにして”。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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