その2 「条件」
さて。本編の始まりです。感情が終わってる悠馬君は無事に恋愛ができるのでしょうか・・・
家政婦が辞めた。
それだけのことのはずだった。
けれど、佐伯悠馬の生活は、そういう「それだけ」で簡単に崩れる。
朝食はコーヒーだけ。
洗濯物は椅子に積まれ、書類は机を侵食し、胃薬だけが規則正しく減っていく。
そして今日。
家政婦が腰を痛めて引退した。
悠馬は報告を抱えたまま、叔父の執務室に立っていた。
『エドワード・ハミルトン。』
対外的には叔父。
けれどこの家で、悠馬の人生の舵を握っているのは間違いなくこの人だった。
「辞めました」
一拍。
叔父は書類から目を上げもしない。
「探せ」
即答だった。
悠馬は静かに言った。
「条件があります」
ようやくエドワードが目を上げる。
「ほう」
悠馬は淡々と指を折った。
「家事全般」
「雑務」
「家計管理」
「生活の整備」
一拍。
自分で言っていて、少しだけ胸が痛い。
全部、自分ができないことだった。
悠馬は続ける。
「できれば少し年上で、落ち着いた人」
さらに。
「同伴が必要な場合の相手にもなれる人」
沈黙。
エドワードの口元が、わずかに上がった。
「……悠馬」
「はい」
「それは家政婦ではない」
悠馬は眉一つ動かさない。
「承知しています」
叔父はゆっくり椅子にもたれ、にやりと笑った。
「有能嫁だな」
悠馬は胃が痛かった。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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