その18 「ハミルトンネットワーク」
ハミルトンネットワークと爆弾男の回
ノアに相談したのは、結果から言うと自爆だった。
僕はただ。
「エレノアさんが少し距離を置いている気がする」
そう零しただけだった。
なのに。
ノアの目が変わった。
嫌な予感しかしない。
「兄さんが本気」
ぽつり。
そして次の瞬間。
端末が開かれた。
「ノア?」
「大丈夫」
大丈夫じゃない。
ノアが大丈夫と言う時は大丈夫じゃない。
「ちょっと確認するだけだから」
何を。
誰に。
確認する気だ。
数時間後。
Zoom会議。
開催。
悠馬不在。
勝手に世界が動く。
画面が分割される。
まず映ったのは蘭だった。
無表情。
「何」
次に凛。
腕を組んでいる。
そして。
その隣で手を振る男。
「Hey!!」
カイルだ。
凛の夫。
陽気。
余計なことしかしない。
ノアは咳払いをした。
「報告があります」
「また余計なこと?」
凛が即座に刺す。
「余計じゃない」
ノアは真剣だった。
「兄さんが本気です」
一拍。
「……は?」
蘭が瞬きをした。
「誰に」
凛が聞く。
ノアが答える。
「エレノアさん」
その瞬間。
「AMAZING!!」
カイルが拳を握った。
「黙れ」
凛が即座に言う。
「Sorry!」
カイルは笑顔のままだ。
蘭は淡々と。
「まぁいいんじゃない?」
「よくないわよ」
凛が即答する。
「悠馬は放っておくと独身のままオフィスで死ぬ」
妙に説得力があった。
「Exactly!!」
「黙れ」
会議は荒れた。
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ノアは真面目に続けた。
「距離を置かれて焦ってました」
「焦る悠馬?」
凛が眉を上げる。
「珍しいわね」
「兄さんは自分から動けない」
ノアが頷く。
「だから僕が動きます」
「やめなさい」
凛が目を細める。
「あなたが動くと火山が噴火するのよ」
「もう噴火してる」
ノアは爽やかに言った。
最悪だった。
蘭がぽつり。
「勝手にすれば」
温度がゼロ。
カイルが身を乗り出す。
「僕も手伝うよ!夏休みだし子供たち連れて――」
「やめて」
「来るな」
凛と蘭が同時に刺した。
「Wow」
カイルが笑う。
止まらない。
ハミルトンネットワークは止まらない。
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そしてノアは静かに言った。
「父上にも報告します」
凛が目を閉じた。
「出たわね」
蘭がぽつり。
「チクり」
ノアの得意技。
親への即時通達。
その日のうちに。
全部が伝わった。
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ウィルトシャー。
紅茶。
隠居中のエドワードが微笑む。
「ほう」
ジェシカが生暖かい目をする。
「あらあら」
拓海が吹き出す。
「マジかよ」
菜摘が胃薬を探す。
「悠馬に飲ませなきゃ」
そして。
エドワードが静かに言った。
「最終フェーズだ」
ジェシカが頷く。
「有能嫁最終計画ですね」
拓海が笑う。
「逃すなってやつか」
エドワードは紅茶を飲む。
満足そうに。
「エレノアを逃すな」
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同じ頃。
ロンドン。
佐伯悠馬は何も知らない。
(……胃が痛い)
世界が動いていることも知らずに。
火薬工場にガソリンが撒かれたことも。
噴火が始まったことも。
知らずに。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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