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その16 「最終形態(火山噴火版)」

毎回噂の伝達の速い悠馬君の会社

噂は消えない。


訂正しても。

否定しても。


むしろ否定した方が育つ。

会社というのはそういう場所だ。


ルイスは相変わらず現れる。


週に一度。

いや、ノアの機嫌次第では二度。


小さな靴音が廊下を走る。


「悠馬おじさん!!」


胃が縮む。


そして社員が見る。


優しい目で。

生暖かい目で。

理解した目で。


最悪だ。


噂は進化していた。


もはや隠し子程度ではない。

物語になっている。


「聞いた?」


「何が?」


「最終形態」


「最終形態って何」


「ノア卿がさ」


 一拍。


「佐伯さんを好きすぎて妹と契約結婚したのは有名じゃん」


「……まあ、あの結婚は謎だよね」


「で、佐伯さんに隠し子ができた」


「はいはい」


「ノア卿が引き取った」


「はいはい」


「実の息子として育ててる」


「……はい?」


「でも佐伯さんが心配しないように表向きはノア卿の子」


「重い」


「さらに」


声が低くなる。


「佐伯さんの後継者教育のために職場に連れてきてる」


「後継者教育……?」


「福利厚生改革もそのため」


「育児部屋もそのため」


「全部そのため」


「やば」


「愛が火山」


噂は勝手に完成していた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


僕はそれを知らないふりをして仕事をしていた。


していたが。


視線が痛い。

社員が優しい。

優しさは凶器だ。


エレノアが資料を置いた。


「佐伯さん」


「はい」


「……ルイスくん、今日も来ています」


「……はい」


僕は胃を押さえた。


エレノアは一拍置いた。


「人気ですね」


「人気ではありません」


「そうですか」


そうですか、が怖い。

僕は耐えきれずに言った。


「信じてませんよね」


エレノアが瞬きをした。


「何をですか」


「噂です」


一拍。


エレノアは淡々と答えた。


「話半分です」


半分。

半分信じている。


僕は死んだ。


「半分も信じないでください」


エレノアは書類を揃えながら、ぽつりと言った。


「……佐伯さん」


「はい」


「世の中には“火のない所に煙は立たない”という言葉がありますが」


僕は胃を押さえた。


「違います」


エレノアは一拍置く。


「あなたの周りは、火事というより……」


視線が淡々と僕に落ちる。


「火山が噴火しているレベルですね」


僕は死んだ。


「……それはノアです」


「ええ」


即答だった。


「噴火源が明確なのも珍しいです」


「やめてください」


「面白いです」


「面白くないです」


エレノアが小さく笑った。


「佐伯さん」


「はい」


「否定が下手です」


「知っています」


知っているのが辛い。


ーーーーーーーーーーーーーーー


その時。


廊下から声がした。


「兄さん!!」


ノアだ。

元気だ。

現場に行け。


ノアの後ろからルイスが飛び出す。


「悠馬おじさん!!」


僕の腹に突撃。


「ぐっ……!」


社員が微笑む。


噂が確信になる。


ノアがにこにこして言った。


「兄さん、後継者教育だよ」


「殺すぞ」


「冗談冗談」


冗談に聞こえない。

エレノアが静かに言った。


「ノア卿」


「はい?」


「あなたは火山です」


ノアが固まった。


僕は救われた。


しかし。


救われても噂は消えない。


噂はもう会社の物語だ。


僕の胃は、今日もそれを抱えている。



ここまで読んでくださってありがとうございます!


『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。

結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。

相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。


更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので

よかったらまた覗いてください。


感想・フォロー等とても励みになります!

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