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佐伯悠馬の結婚事情(仮)  作者: 雪森蓮


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幕間 「噂/事実/確認」

エドワード、今回は絶対たまたま思いついて決めてる

佐伯悠馬のアメリカ同行が決まったのは、

その日の朝だった。


エドワードの一言。


「悠馬を連れて行け」


それだけで決定した。

伯爵家はそういう家だ。


悠馬は立ち尽くした。

胃が先に旅支度を始めている。



(……アメリカ)


(なぜ?)


(監督??)


(家庭教師???)


一拍遅れて、

悠馬はふと思った。


(エレノアさんに)


(伝えるべきか)


合理の部下。

予定管理の刃。

休暇の調整。

同行の報告。


仕事としては――必要だ。

でも。


(……伝える理由がない)


悠馬は結論を出した。

命令だ。

決定事項だ。

自分の意思ではない。

説明する言葉がない。


胃が痛い。


それだけは説明できるが、

説明してどうする。


悠馬は黙った。

遅い男は黙るのが得意だ。


そして。

決定事項は必ず漏れる。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


誰が言ったのかはわからない。

使用人か。

秘書か。

社交界の誰かか。


『噂はいつも「最初の口」を持たない』


昼にはもう。

ロンドンの冬の廊下を滑っていた。


「伯爵家がクリスマスにアメリカへ行くらしい」


それは事実だった。

だから厄介だ。


「ルイスが母親に会いに行く」


「伯爵が同行する」


「そして――」


「悠馬も同行する」


事実の骨に、

噂は肉をつける。


「……やはり」


「訳ありの女がいる」


「昔から言われていた」


「婚活をやめた理由だ」


誰も見ていないのに。

誰も知らないのに。


”確定する”


「その女が」


「隠し子ルイスの母親だ」


完成した。

噂は完成するのが好きだ。

人間も好きだ。


噂は冬のロンドンを滑り、

商談の言葉に混ざり、

電話の行間に潜り、

海を越える。


ーーーーーーーーーーーーーー


ドイツ。

十二月中旬。

エレノアは既にこちらにいた。


早めの休暇。

家族のための決定事項。

距離を置くための合理。


ヴァイツマン家の窓は早く暗くなる。

室内は暖かい。

それが余計に落ち着かない。


エレノアは書類に目を落としていた。

商談の整理。

休暇中に片付ける合理。


そこに。

海を越えた異物が混ざった。


『伯爵家はクリスマス休暇にアメリカへ』


『ルイス様が母君に会いに行かれるそうです』


『伯爵が同行』


『佐伯さんも監督役として同行、と』


事実だった。

事実だから刺さる。


エレノアの指が止まった。


(……アメリカ?)


合理が一瞬遅れる。

そんな予定は聞いていない。

休暇は管理されている。

同行者も管理されている。


なのに。

胸の奥がわずかに沈む。


合理ではない沈み方。


エレノアは淡々と返信した。


『確認します』


合理の返事。


スマホを伏せる。

距離を置くはずだった。

整理するはずだった。


(……なぜ)

(今)

(アメリカ)


悠馬は黙った。

エレノアは揺れた。


噂は育った。


冬は並走している。


静かに。

確実に。



ここまで読んでくださってありがとうございます!


『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。

結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。

相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。


更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので

よかったらまた覗いてください。


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