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佐伯悠馬の結婚事情(仮)  作者: 雪森蓮


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135/170

幕間 「10月/家庭教師/被害者」

ある意味日常平常運転

10月。


ロンドンの空は灰色だった。


夏は終わり、

秋が始まり、

噂は――


一応、落ち着いた。

落ち着いたことになっている。



その代償を払っている者がいる。


ルイス・悠人・ハミルトン。

7歳。

最年少。

被害者。


ーーーーーーーーーーーーーー


「ルイス様、本日は算数から参りましょう」


「……はい」


ルイスは小さく頷いた。

机が広い。


ノートが多い。

鉛筆が減る。


自由が減る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「次、英語です」


「……はい」


逃げられない。

伯爵家の未来だから。


噂の未来だから。

大人の事情だから。


ルイスは静かに思った。


(ぼく、なにもしてないのに)


ーーーーーーーーーーーーーー


廊下の向こうで声がする。


「パブリックスクールに向けて前倒しだ」


「噂がある以上、教育は早い方がいい」


エドワードの声。

楽しそうに言うな。


「かわいそうに」


ジェシカの声。

言うだけだ。


ルイスは鉛筆を握った。


ぎゅっ。

子供の握力。

限界。


ーーーーーーーーーーーーー


そこへ救世主の声。


「ルイスー!」


ドアが開く。

ノアだった。


父上。

爆弾。


いつも通り。


「ルイス!休憩しよう!外行こう!」


「行けません」


家庭教師が即答した。

合理の刃。


ノアが固まる。


「えっ、なんで!?」


「本日は予定が詰まっております」


「まだ子供だよ!?」


「伯爵家ですので」


強い。

家庭教師が強い。


噂より強い。


ルイスは小さく手を挙げた。


「……父上」


「なに!?」


「ぼく」


一拍。


「クリスマス休暇はアメリカに行きたいです」


ノアが泣きそうになった。


「行こう!!!!絶対行こう!!!!」


即答した。

即答すぎる。

爆弾は親バカだった。


家庭教師が淡々と言う。


「その頃には課題も増えます」


「増やすな!!!!」


ルイスは机に突っ伏した。


子供が机に突っ伏した。


(ぼく、なにもしてないのに)


(大人が勝手に噂して)


(大人が勝手に勉強を増やす)


(最低だ)


ルイスは小さく呟いた。


「……ぼく、普通の子になりたい」


空気が止まった。

家庭教師も止まった。

ノアも止まった。


廊下の大人たちも沈黙した。


ーーーーーーーーーーーーー


その沈黙を。

最悪の一言が切り裂いた。


「普通?」


エドワードだった。


冷静な声。

悪気がない声。

だから最悪。


「悠馬は五歳でこれをやっていたが?」


空気が凍った。


ジェシカがゆっくり振り返る。


「……エドワード」


拓海が額にしわを寄せる。


「やめろ」


菜摘が遠い目をする。


「それを普通と言わないで」


ノアが叫んだ。


「父上!!兄さんを基準にするな!!」


「基準だろう」


「基準じゃない!!化け物だ!!」


ルイスが顔を上げた。


「……叔父上、化け物なの?」


ノアが死んだ。


エドワードは淡々と言った。


「安心しろ、ルイス」


一拍。


「お前はまだ人間だ」


ーーーーーーーーーーーーー


最悪だった。

ハミルトン家は今日も平常運転だった。


ルイスは鉛筆を置いた。


(クリスマスは絶対アメリカ)


ルイスの復讐計画は静かに始まった。





ここまで読んでくださってありがとうございます!


『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。

結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。

相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。


更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので

よかったらまた覗いてください。


感想・フォロー等とても励みになります!

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