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佐伯悠馬の結婚事情(仮)  作者: 雪森蓮


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その80 「爆弾投下/公開処刑/困った顔」

きのどくというかなんというか。

エレノアが去ったあと。


悠馬はその場で固まっていた。


仕事をしろ。

合理に戻れ。


平常運転だ。

平常運転。


平常運転とは。


ーーーーーーーーーーーーー


そこへ。


最悪の足音が近づいてきた。

軽い。

迷いがない。


”爆弾”の足音だ。


「兄さーん!」


明るい声。

終わった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


ノア・ハミルトンが現れた。


伯爵の顔。

爆弾の笑顔。


昨日絞められたはずの男。

反省はどこに置いてきた。


「おはよう!」


「……おはようございます」


悠馬は敬語で返した。


兄なのに。

いつも通りだ。


”いつも通り”


ノアはじっと悠馬の顔を覗き込んだ。


「兄さん」


「何ですか」


「今日、変だよ」


やめろ。

爆弾が正解を引くな。


「変ではありません」


「変だよ」


「変では」


「変」


断定するな。


ノアはにこにこしたまま言った。


「顔赤い」


「赤くないです」


「赤いよ」


「赤く」


「恋?」


悠馬が死んだ。


「……は?」


声が裏返った。

終わった。


ノアは無邪気に首を傾げる。


「だってさ」


指を立てる。


「兄さん昨日から妙にそわそわしてる」


「してません」


「してる」


「してません!」


「してる!」


爆弾が強い。


悠馬は胃を押さえた。


「……ノア、静かにしてください」


「え、なんで?」


「静かに」


「兄さん、もしかして」


一拍。


「エレノアさん?」


悠馬が窒息しかけた。


「違います!」


即答した。

即答すぎた。


怪しい。


ノアの目がきらきらする。


「あ、否定が速い」


「違います!」


「否定が速い!」


「違います!」


やめろ。

爆弾が燃料を撒くな。


ノアは楽しそうに笑った。


「兄さんさぁ」


声を落とす。

余計なことをする声だ。


「昨日、寝れなかったでしょ」


「寝ました」


「嘘だ」


当たるな。


「だって兄さん、顔が完全に寝てない顔だもん」


「寝ました」


「寝てない」


「寝ました」


「寝てない!」


爆弾がしつこい。


そしてノアは、にこにこしたまま言った。


「兄さん、まさかさ」


一拍。


「恋愛とか」


悠馬が硬直する。


「……は?」


ノアは無邪気に続けた。


「検索してたんじゃないよね?」


悠馬が死んだ。


「してない!!」


即答した。

即答すぎた。


怪しい。


ノアがぱっと笑う。


「だよね!」


安心した顔。

余計に刺さる。


「そんなことするの中学生までだよね!」


悠馬が撃沈した。


布団の中で検索した四十代。


胃が死ぬ。

魂も死ぬ。


ノアは追い打ちをかける。


「兄さん大人だもんね!」


(やめて)


「恋とか検索しないよね!」


(やめて!!!!!!)


悠馬は震える声で言った。


「……ノア」


「なに?」


「黙れ」


「ひどい!」


「黙れ!!!!」


ノアは満面の笑みで言った。


「兄さん、恋だよ!」


悠馬は机に手をついた。


「……何が言いたいんですか」


「言いたいことは一つだよ」


爆弾は無邪気に笑う。


「兄さん、遅い!」


やめろ。

刺さる。


そのとき。

背後から淡々とした声。


「ノア卿」


二人が同時に固まった。

振り返る。


そこにいたのはエレノアだった。

資料を抱えたまま。


完璧に整った姿勢。

完璧に整った距離。

完璧に仕事の顔。


ただ。

ほんの少しだけ。

困っている。


ノアはにこにこしたまま言った。


「あ、おはようございます!」


空気を読め。

読めない。


爆弾だ。


エレノアは淡々と返した。


「おはようございます」


一拍。


「業務の妨げです」


「妨げてないよ!」


「妨げています」


合理の刃。


ノアは無邪気に首を傾げる。


「僕、兄さんと雑談してただけだよ?」


「雑談の内容ではありません」


困っている。

ほんの少し。


悠馬の喉がカラカラだった。

昨夜検索した単語が蘇る。


『恋』


やめろ。


ノアが満面の笑みで爆弾を落とす。


「エレノアさんも思うでしょ?」


(やめろ)


「兄さん、恋だよね?」


(やめろ!!!!!!)


悠馬が叫んだ。


「違います!!!!」


本社フロア中に響いた。

終わった。


沈黙。

仕事の世界が止まる。


エレノアは一拍置いて言った。


「……承知しました」


承知していない顔で。

困っている。


ほんの少し。


ノアは満足げに頷いた。


「うん、恋だ」


「黙れ!!!!!!」


こうして爆弾は今日も爆弾だった。

悠馬の平常運転は粉々だった。

検索履歴を消しても意味がない。


世界は早い。

ノアは最悪に早い。


悠馬は遅い。

致命的に遅い。


そして。


困った顔の部下だけが、

ほんの少しだけ立ち尽くしていた。





ここまで読んでくださってありがとうございます!


『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。

結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。

相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。


更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので

よかったらまた覗いてください。


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