表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
佐伯悠馬の結婚事情(仮)  作者: 雪森蓮


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

131/143

その79 「翌朝/平常運転(できない)」

キョどる悠馬君

翌朝。


ロンドンの空はいつも通り灰色だった。

世界は何も変わっていない。


変わっていないはずだった。


ーーーーーーーーーーーーーー


悠馬は出勤した。


スーツは整っている。

髪も整っている。


顔色は整っていない。

胃はいつも通り痛い。


それもいつも通りだ。


ーーーーーーーーーーーーーーー


昨夜の検索履歴は消した。

そこだけは完璧だった。


完璧すぎて逆に怪しい。


(……忘れろ)


悠馬は心の中で唱えた。


(何もなかった)


(ただの誤作動だ)


(胃が痛かっただけだ)


(恋ではない)


(恋では)


思考が止まる。

最悪だ。


ーーーーーーーーーーーーーー


エレベーターが開く。

本社フロア。


朝の空気。

仕事の匂い。

合理の世界。


助かった。

ここは安全だ。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「おはようございます、佐伯さん」


声がした。


悠馬の脳が止まった。

エレノアだった。


いつも通り整った服装。

いつも通り落ち着いた顔。

いつも通り合理の塊。

何も知らない顔。


当然だ。

知られているはずがない。


検索履歴は消した。


ーーーーーーーーーーーーー


「……っ」


悠馬は息を吸い損ねた。


喉が鳴った。

返事が遅れる。


致命的に遅れる。


「……お、おはようございます」


声が裏返りかけた。

終わった。


エレノアが一瞬だけ瞬きをした。


困ったような沈黙。

ほんの少しだけ眉が寄る。


「……佐伯さん?」


「はい!」


反射で返事をした。

爆弾みたいな返事をした。


やめろ。


エレノアは淡々と資料を差し出す。


「本日のスケジュールです」


「はい!」


また元気よく返事をした。


やめろ。


手が触れそうになる。


触れていない。

触れていないのに。

悠馬はなぜか避けた。


意味が分からない。


エレノアの手が空中で止まる。


困った顔。

ほんの少し。


「……何か」


一拍。


「問題でも?」


「いえ!」


即答。

即答すぎる。


怪しい。


悠馬は慌てて咳払いした。


「……いつも通りです」


いつも通りではない。

昨夜検索した。


恋と打った。

終わっている。


エレノアは静かに首を傾げた。


「……顔色が悪いです」


「いつもです」


「いつもでは困ります」


またそれだ。

困る。


なぜ。

昨日の夜と繋がる。


最悪だ。


悠馬の脳内で検索結果が蘇る。


『相手のことを考えてしまう』

『誤解されたくないと思う』

『理由が分からないのに気になる』


やめろ。

蘇るな。


「佐伯さん」


エレノアの声が少し低い。


「……はい」


「……昨夜、眠れませんでしたか」


優しさではない。

合理だ。

健康管理だ。


分かっている。

分かっているのに。


悠馬は目を逸らした。


「……寝ました」


嘘である。

恋を検索していた。


エレノアは小さく息を吐いた。


困った顔。

ほんの少しだけ。


「……承知しました」


承知していない顔で。

彼女は歩き出す。


悠馬はその背中を見送りながら、

胃を押さえた。


胃が痛い。


いつも通りだ。


ただ。

今日は胃だけじゃない。


(……終わった)


何が終わったのか分からないまま、

佐伯悠馬は平常運転を装うしかなかった。


『致命的に遅い恋の翌朝だった』

ここまで読んでくださってありがとうございます!


『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。

結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。

相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。


更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので

よかったらまた覗いてください。


感想・フォロー等とても励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ