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佐伯悠馬の結婚事情(仮)  作者: 雪森蓮


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幕間 「検索」

悠馬君、ひのきのぼうでラスボスは無理なんじゃないかな

深夜二時。


ロンドンの空は静かだった。


静かすぎて眠れない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


悠馬は自分のフラットのベッドに沈んでいた。


明かりは消してある。

街の灯りだけがカーテンの隙間から薄く差している。


眠るべき時間だ。

休むべき時間だ。


合理的には。


(……寝ろ)


正論である。


寝なければ明日死ぬ。

仕事がある。

会議がある。

資料がある。


胃薬もある。


なのに。

目が閉じない。


(……嫌だ)


昼からずっと残っている。


誤解を解きたい。

でも言えない。

困らないはずなのに困る。


意味が分からない。


噂など、放っておけばいい。


今まではそうしてきた。

どう思われてもいい。


誤解されてもいい。

仕事ができればいい。


それで生きてきた。


なのに。


(エレノアさんにだけは)


そこで思考が止まる。

最悪だ。


悠馬は布団の中で寝返りを打った。


胃が痛い。

いつものことだ。

いつものことなのに、今日は違う。


胃じゃない場所も痛い。


悠馬はゆっくり手を伸ばした。

枕元のスマホ。

こそこそ取る。

誰も見ていないのに、

こそこそする。

これは業務ではない。

それだけは分かる。


画面が点く。


眩しい。

罪悪感が眩しい。


(……何をしているんだ僕は)


額を押さえた。

だが指は勝手に動く。


連絡先。

業務用の一覧。


合理の塊。


そこにある名前を探す。

当然のようにある。

当然のように。


”止まる”


『Eleanor.』


悠馬はその名前をじっと見た。


ただ見ている。

送らない。

電話しない。


できるわけがない。

夜中だ。


迷惑だ。

理由がない。

合理がない。


なのに。

名前だけが消えない。


(……誤解を解きたい)


心の中で呟く。


(信じてほしい)


続けてしまう。


(……なぜ)


意味が分からない。

自分が分からない。


それが一番困る。


悠馬は画面を閉じた。

閉じたのに。


また開いた。

閉じる。

開く。


最悪だ。


しばらくして、

悠馬は諦めたように検索窓を開いた。


論文でも読むような顔で。

現実逃避だ。


指が止まる。


(検索するな)


正論である。


(こんなことを検索する男がいるか)


いる。

ここにいる。


ーーーーーーーーーーーーーーー


悠馬は慎重に打った。


『誤解を解きたい 特定の人にだけ』


変な候補が出る。

怖い。

閉じる。


もう一度。


『部下 信じてほしい なぜ』


何の報告書だ。

閉じる。


胃が痛い。

だが止まらない。


悠馬は震える指で、

最も短い単語を打った。


『恋 とは』


検索結果が出た。

終わった。


「……」


 悠馬は固まった。


(違う)


(違うだろ)


(恋はもっとこう)


(華やかで)


(若くて)


(心臓がどきどきして)


(僕は胃が痛いだけだ)


スマホにはこう書いてある。


『恋の初期症状:相手のことを考えてしまう』


『誤解されたくないと思う』


『理由が分からないのに気になる』


悠馬は青ざめた。


(全部当てはまっている)


最悪だ。

さらに下に。


『恋は自覚が遅い人ほど深刻化します』


やめろ。

余計なことを書くな。


悠馬は慌てて画面を閉じた。

スマホを伏せた。

布団をかぶった。


現実逃避だ。


(違う)


(仕事だ)


(合理だ)


(部下だ)


(困るだけだ)


必死に唱える。


でも。

さっき自分で検索した単語が消えない。


(……恋)


言葉だけが胸に残る。

胃はいつも通り痛い。


なのに今日は別の場所も痛い。


悠馬は布団の中で丸くなった。

明日、何事もなかった顔で仕事をする。


そう決めた。

決めたが。


検索履歴だけは消しておいた。

そこだけは完璧だった。





ここまで読んでくださってありがとうございます!


『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。

結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。

相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。


更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので

よかったらまた覗いてください。


感想・フォロー等とても励みになります!

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