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佐伯悠馬の結婚事情(仮)  作者: 雪森蓮


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その73 「エレノア/温度」

悠馬君が気の毒すぎる回

噂は早い。


ロンドンはもっと早い。


佐伯悠馬は遅い。


ーーーーーーーーーーーーーー


エレノアは資料を閉じた。


数字は正しい。

報告書も正しい。

業務はいつも通り。


しかし。


話題だけが異物だった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「佐伯氏のご子息」


笑い声。

脚色。

輸入。


最低の速度。


ーーーーーーーーーーーーーーー


エレノアは噂を鵜呑みにしない。


噂は噂だ。

社交界の娯楽だ。

放っておけば形を変える。


そういうもの。


ただ。


彼女は一つだけ知っている。

ルイスが佐伯に似ていること。


”それだけは事実だ”


事実は噂より厄介だ。


ーーーーーーーーーーーーーーー


執務室。


ノック。


「失礼いたします」


中には佐伯悠馬がいた。


青い顔。

整ったスーツ。


胃薬の気配。


いつも通り。

なのに。

疲労が滲んでいる。


エレノアは淡々と告げた。


「佐伯さん、例の件ですが」


「……はい」


「噂がさらに脚色されて広がっています」


彼の眉がわずかに動く。


それだけだ。

それだけで十分だった。


「差し出がましいですが」


一拍。


「放置すべきではありません」


「……前にも言いましたが」


彼は小さく言った。


「僕は女性とそういうことをしたことが一度もないんです」


必死だった。

真面目すぎるほど真面目だった。


エレノアは表情を変えない。


ただ。

視線だけは逸らさなかった。


「承知しております」


「……え」


「あなたがそのような嘘をつける方ではないことは」


一拍。


「分かっています」


佐伯が固まった。

理解されることに慣れていない顔だ。


エレノアは淡々と続ける。


「問題は噂の真偽ではありません」


「……はい」


「噂が“事実のように扱われる”ことです」


冷静な声。

仕事の声。


でも。


守る声だった。


「伯爵家の件として整理が必要でしょう」


「……そうですね」


悠馬の声が少しだけ戻る。


エレノアは一拍置いて言った。


「佐伯さん」


「はい」


「あなたは遅い方です」


「……はい」


「ですが」


一拍。


「世界が早すぎるのです」


悠馬が目を瞬いた。

その言葉は責めではなかった。


妙に救いだった。


「こちらで可能な範囲は整えます」


「……ありがとうございます」


礼を言う声が小さい。

肩書と合わない。


そこが珍しい。


エレノアは思った。


(面白い人だ)


まだそれだけだ。

恋ではない。


だけど。


観察対象が。


少しだけ“守るべき案件”になった。



ここまで読んでくださってありがとうございます!


『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。

結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。

相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。


更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので

よかったらまた覗いてください。


感想・フォロー等とても励みになります!

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